不動産における戦術と戦略の違い − 第2回 CRE戦略と物流不動産
我が国の不動産は各機関の資料によると、1 不動産総額は2300兆円、2 法人所有はその内490兆円、3 収益不動産は68兆円、4 証券化されたものが25兆円、5 J-REITが5兆円 となっています。
これらの価格表現は、会計上で言う簿価(取得価格)になっており、土地は建物と異なり減価償却の対象になっていませんから、時価との格差が大きく なります。従って、法人所有の500兆円弱=我が国のGDPに匹敵する規模ではありますが、ストックなのかフローベースの概算額なのかも不安定です。
いずれにせよ、企業不動産=CREがこれほどの額に納まっていることの認識は重要と思います。誤解の無いようにしておきたいのですが、CREと事 業用不動産とは概念が異なります。あくまでも企業が利用する不動産を事業に供するか否かを問わず、CREと定義づけようと言うのです。
生産のために新工場を取得するのもCRE活動であり、遊休地として放置もしくは賃貸借している不動産もCREの構成要素です。
そこで、従来までのCREの扱われ方を見る限り、その場対応というか局面単位での経営陣による意志決定が行われてきたことを、あえて戦術的と言うことにしましょう。
これに対しCRE戦略と呼ぶ場合には経営の意志決定が、事業全体との関係を持ってのCREであることが条件になります。生産のための工場用地を手 当てする際には、金融事情や長期経営計画の視点から取得か賃貸借かを判定し、結果として遊休地となっている自社保有の不動産においても、経営計画の一環と して遊休とするか、転売待機とするかという意志決定を持つことが戦略的と呼ばれるモノです。
物流不動産ビジネスでは、生産~販売に不可欠な物流機能を有した土地建物であり、その需要と供給の両面をカバーする必要がありますから、CRE戦略も需給の対立する概念の双方を理解しておく必要があるのです。
戦略的な売買、賃貸、遊休化、放任、・・・・選択肢のそれぞれに収益の極大化を時間軸と共に示すことが必要になります。
不動産売買や賃貸などの契約の優位性を確保することを戦術的と見なすのと対局にある概念だといえるでしょう。
(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント・花房陵)