物流不動産ニュース

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JA-LPA2周年記念セミナー▼150名の参加者で賑わう 

2008年08月18日

 日本物流不動産評価機構推進評議会(JA-LPA)の2周年記念セミナーが7月31日、日本通運本社ビル・2階会議室で行われ、150名の参加者で賑わった。
 ここではまず基調講演として日本政策投資銀行・企業金融第3部(物流グループ)の古田善也氏が「良質な社会資本形成としての物流不動産~サスティナブルな物流ニーズの獲得に向けて~」を講演した。

<講演する古田善也氏>
 ここでは、物流不動産の変遷について、産業インフラのニーズに応えるため、大量製品への対応を図ったいわゆる「保管型」から、13、14年前から消費インフラのニーズに応えた、多品種少量生産への対応(通過型)へと移行し、さらに7、8年前から金融インフラのニーズに応えた、金融的な評価目線に対応する動きが活発化したと解説。今後、「社会インフラのニーズ」に応えていく必要があると述べた。
 ここでいう社会インフラのニーズは、変わり続ける都市環境の変化に対しては、アセットの方が柔軟性を持って対処し、長期のスパンで人々から受け入れられる施設として存続し続けるような施設を指し、免震構造の採用、耐久性の向上など、災害に強い、社会インフラとしての防災への配慮を図っていく。さらには環境への配慮として、屋上・壁面緑化、太陽光・風力発電、廃材をリサイクルした建て替えを進めていくことが重要と指摘した。
 その上で、期待と夢を込めて二百年住宅ならぬ、二百年物流施設を提唱。建設における工夫としては、高耐久性コンクリートなどの材質の向上、スケルトンとインフィルの2段構造、階高・容積などにゆとりの確保を行っていく。このことで、コスト増とはなるが、超長期でみれば経済性を確保することとなり、現実の経営に即したなかで長期施設の取組みを図るべきなのではないか。長期施設の運営のため、建て替えや機能のコンバージョン、修繕などを含めたプロパティマネジメントも今後、必要になるとの考えを示した。
 続いて日本物流不動産評価機構の代表理事で日通不動産取締役建築設計部長の望月光政氏が「物流不動産の評価方法と物流施設の考え方」について講演。

<講演する望月光政氏>
 ここでは日本物流不動産評価機構が実際、行っている評価書・レポートなどの主旨・評価の種類、判定方法、評価項目を紹介。物流不動産の見方として、立地・敷地・配置・プラン・躯体・仕上・部分詳細・付帯設備・設備・その他の項目に分けて、詳細を解説。
物流不動産を資産として、より評価を高める方法についてのポイントは、①立地(マーケット)の特性を十分に分析し、その規模に合わせた機能的な設備であること、②荷主やテナントの変更にも対応できる汎用性があること、③施設に於いては長寿命化を計っていること、④維持管理により、施設の耐用年数などに合わせたメンテナンスが施されていること―だと述べた。
 続いて一級建築士事務所「シーアンドシーエンジニアリング」の代表取締役で日本物流不動産評価機構の評価員でもある中山克己氏が「物流施設の耐震安全性と床スラブの性能」について講演。
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<講演する中山克己氏>
 日本の耐震設計基準は1981年の新耐震を経て強化、その後も幾度となく強化されているなか、物流施設の耐震安全性をいかに確保していくかを解説した。
 ここではまず、物流施設は堅牢とされているが、建物形状的に、①長さが70メートル以上のものが多いため、外気温の変化により耐震グレードが落ちる、②階高が業務ビルと比べ高いため、地震時の揺れも大きくなる、③1階が荷捌き用途の場合はピロティ形式になりやすく、耐震グレードが落ちるので、1階の柱の強さを確保する必要性-があること。また構造的にも、①フォークリフト・トラックの走行があるため、柱のひび割れ、たわみ・振動対策が必要、②骨組は鉄骨造・骨組構造とブレース構造の併用構造が多く、ブレース構造には耐震余裕度確保が必要、③柱スパンが広いため、梁のたわみ、振動に注意しなければならない―といった施行上注意しなければならない課題があることを指摘。
 現行、建築基準法では強度に対しての安全性の確認のみを問うているが、ひび割れ・たわみ・振動障害を考慮した設計をしなければ問題が発生すること。1階に土間コンクリートを採用したケースでは、ひび割れ・たわみ障害や、フォークや集中荷重による動荷重の検討不足、施行時の沈下といった障害が多く発生していることなどを述べ、その後、既存物流施設の改修方法のイロハを解説。
 倉庫だから安かろう、悪かろうではなく、社会資本という観点から大災害時にも機能する物流施設を構築していくことが重要だ、と訴えた。
 最後に田仲建築設計事務所代表で日本物流不動産評価機構の評価員である田仲稔氏が「ドライ倉庫を冷凍・冷蔵倉庫に改造するには」を講演。
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<講演する田仲稔氏>
 コールドチェーンが進展するなか、常温・冷蔵・冷凍の3温度帯に適合した施設ニーズが高まっている中、ドライ倉庫の一部をチルド・フローズン倉庫に改造したいといった相談も増えてきているが、単なる改造では温度管理・結露・凍上などの問題が生じる。そこでドライ倉庫を冷凍・冷蔵倉庫に改造するためのイロハについて、ここでは解説。
 まず冷凍・冷蔵倉庫は稼動中の補修ができないこと、また冷却により収縮すること、防熱より防湿が重要であること、凍上は恐ろしい現象であるといった基本を紹介。品質管理の必要性から荷捌き室を低温化する要求が増えているが、低温化するだけでは暖気の侵入により結露・カビが発生して環境的に良くないとして上で、結露防止の方法として、①低温荷捌き室に保冷車を接車する際には密閉性を高める、②ドッグシェルター・エアーシェルターの工夫を行い、陽圧空調などを採用する、③室温の温度・湿度を一定に保ち、商品の品質管理を徹底する、④熱ロスを最小限に抑え、ランニングコストを削減する―と述べた。
 その上で、低床式を高床式に改造(大規模な築造式冷蔵庫)するケース、高床式を改造(比較的小規模なプレハブ冷蔵庫)するケースの2つで、ドライ倉庫を冷凍・冷蔵倉庫に改造するパターンを紹介した。