これからの物流不動産戦略 − 第11回 物流不動産不況と戦略
ものづくりの不況は、必要とされるモノが変化していることを理解しなくてはなりません。衣食住に関わる耐久消費財や食品などは基本的に世帯数や人口に比例します。洋服たんすがいっぱいになっても買い物をやめられない女性の習性は微笑ましいものですが、さりとて就業人口が減ってゆく我が国では高付加価値への転換ができなければ、カジュアル衣料は海外市場を開拓しなくてはなりません。
自動車に乗りたがらない若者が増えているのではなく、自動車を保有したがらないスタイルに変化しているのです。自動車も「いつかはクラウン」というステータス商品から、移動手段のツールに変わろうとしているからなのです。
モノが売れなくなると物流は不要になってきますが、ものづくりが生活者のソリューションビジネスとして、必要なときに必要なモノを提供して、終われば撤収回収するようになると、やはり物流は欠かせない役割を持ち続けます。
超大型メガ物流施設は旧来の物流業以外の産業から発達しましたが、その理由には物流業としての運送業界の進化があったからです。日本全国2日もあれば、どこからでもリーチが行き届くのは、運輸企業のネットワーク高度化の貢献が大です。物流拠点の統廃合は、物流効率化やコストダウンを目指したものではなく、当初のきっかけは物流業のニーズ把握不足、提案力の弱さから、異業種の提案営業力に負けたのです。結果として輸送短縮、ワンフロアの使い勝手によって物流コスト削減効果が生まれたのは、後知恵とも言えるでしょう。
さて、これからの物流戦略を大局から眺めるとき、どこに在庫するか、そこからリーチさせるかは、輸送コストの多寡に大いに影響すること、従来と変わりませんから、新産業が衣料介護教育にシフトしようとも拠点の設置は重大な課題となります。
主力輸送手段であるトラックの800万台は依然として、自営白ナンバーが600万台もある以上、省エネ運行や排出ガス効果も期待できません。いっそうの営業転換(物流業務のアウトソーシング)が促進されてこそ、省エネも排出ガス削減にも効果が期待できるのです。
物流コスト比率もいつの間にか世界レベルまで下がってきており、これ以上のコストダウンには物流業者だけの努力では限界地に届きました。
ビジネスソリューションとしての物流を再構築するには、拠点の配置をいっそう消費地に近づけて、まさに24時間フリーアクセスを容易にしなくてはなりません。届けるだけでなく、取りに行く、必要なときに利用しに行く場所としての物流拠点が再設計されることになります。ちょうどショッピングセンターに美容や衣料、教育のビジネスが発生したように、物流拠点の裏側には店舗とオフィス、サービス拠点とホテル、衣料が並存するモデルが登場するでしょう。自らの業種を超えていっそう貪欲にマーケットを作り出す意欲があれば、新しいビジネスモデルが誕生するのです。
自らとマーケットの位置づけを考えながら、新しい顧客を創造するために物流があるのだと思えば、ドラッカーの主張する「顧客創造」に終わりはなく、物流もまたとどまらない進化を遂げてゆくのです。
(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント・花房陵)