高野口運送▼システム化に注力、荷主からの問い合わせ対応効率化 
2009年12月17日 【物流ウィークリーhttp://www.weekly-net.co.jp/】和歌山県橋本市に本社を構える高野口運送。同社は知る人ぞ知るIT物流企業だ。長距離配送がメーンの同社は、業務の効率化を目指し、システム化に注力。その取り組みが認められ、「モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)」が主催する「MCPCアワード2008」で奨励賞も受賞している。
同社では、荷主からかかってくる問い合わせのうち、60%を占める車両の現在地確認と、30%の荷下ろし場所や時間の変更指示に、いかに効率的に対応するかを考えた結果、動態管理機能を備えた運行管理システムを導入。パナソニック電工ロケーションシステムズが販売する「Locoもび」をベースに、車両の位置と状態を把握し、到着予定時刻を確認できる仕組みを構築した。
携帯電話の画面上で車番、現在地、速度、履歴などが閲覧でき、荷主担当者は自社の荷物を積んだ車両がどこを走っているかを、いつでも確認できるようになった。結果、高野口運送では事務所での対応件数が90%も減少。しかも、ドライバーへの負担は増えていないという。
システム化の理由について野口知社長は、「楽をしたかっただけ」と豪快に笑う。「荷主さんからの問い合わせに1日中追われていたが、IT化で非常に楽になった」という。営業部長の山田和則氏も、「荷主さんに、『何かあったらすぐに携帯で見られる』という安心感を提供したことで喜ばれている」と自信を示す。
同社はこのほど、「車両停止警告システム」も導入。車両が30分以上停車していると、事務所のパソコンが配車担当者に知らせるというもので、予定にない停車の場合、即座にドライバーに確認を取る仕組みを社内で構築している。
開発を手掛けたシステム管理部の大林茂之氏は、「位置情報を取得しているため、荷積み・荷下ろしで止まっているのか、トラブルがあって止まっているのかが明確」とし、「電話をかけたら、ドライバーが体調を崩し休憩していたケースもあった」という。同社長は「50台以上の車両が遅滞なく運行しているかどうかを、配車担当者が24時間把握することは不可能。コストはかかるが、リスク管理は徹底すべきだと考えた」と語る。
野口社長は、「同じ運賃を提示した中で選ばれることが先決だが、いずれは他社より高い運賃でも選ばれるように、質の向上に取り組みたい」とし、「人材育成やミス・トラブルを未然に防ぐための投資は惜しまない」と言い切る。
同社はITへの投資だけでなく、人材育成にも注力。外部の講師を招き、自己啓発活動も推進している。「ドライバーの社会的地位は高いとはいえない。近所にあいさつしているか、ゴミをポイ捨てしていないかなど、基本的なことも話している」とし、「社会のルールを守れないドライバーが存在するのは確か。ドライバーの地位を向上させるためには教育しかない」と断言。「顧客からも『おたくは会社もドライバーも違うね』と言って頂けるよう、これからもシステム化と人材育成に取り組んでいきたい」。
社内SEが成長支える
システム選定の経緯を野口社長に聞くと、「座標軸のCSVデータをエクセルベースで加工して自由に使えたから」と即答。運送会社の経営者では珍しい理系出身の社長かと思いきや、「まったくの素人」という。同社がITをここまで使いこなせるには理由があった。優秀な社内SE・大林茂之さんの存在だ。
同社長は、「当社の規模でSEがいることに驚かれるが、顧客からこうしてほしい、ああしてほしいと言われたときに『わかりました』と即答できるのと、『外注先と相談します』では大きな差が出る」と胸を張る。「外注の場合、帳票の形式を少し変えるだけでも数万円かかるが、自社でできれば、顧客の要望に柔軟に対応できる」とも。
システムを納入したパナソニック電工ロケーションシステムズの澤田俊明課長は、「引き合いを頂き訪問してみると、びっくりするぐらいITに詳しい社長と担当者が出てきて驚いた」と振り返り、「スムーズな導入にはすり合わせが重要になってくるが、大林さんのおかげでストレートに進んだ」と絶賛。「なにより野口社長の業務効率化に取り組む姿勢には強い感銘を受けた」という。
大手や物流子会社ではSEは珍しくないが、システムのカスタマイズが自社で行えるという強みが、高野口運送の成長を支えていると言える。
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