<成熟社会と高負担の事実>55年体制を振り返る − 第2回 政治と物流不動産『政権交代で何が変わるか』
昭和から平成に変わり20年が過ぎた。今上天皇在位20周年より、中国建国60年とか日中国交30年の方がめでたいのかは分か らないが、メディアの紹介時間の多さに比例した取り上げには疑問がある。外交といえば日米安保条約のことばかりが取り上げられているが、その実アジアでは 毎年のように内政干渉とも言える教科書事件や従軍慰安婦問題が起きてきた。その都度、お詫び外交とも呼ばれた外務大臣のアジア歴訪と陳謝会談が懐かしい。 今やアジアは我が国経済にとってなくてはならないプレゼンスの及ぶところではあるが、実は米露冷戦終結後にとっての仮想敵国が存在することを忘れてはなら ない。
外交青書には全く触れられてはいないが、中日の外交は諸刃の剣であることの緊張感を失うわけにはいかない。成長鈍化の我が国は成熟した国家とし て、外交にはとんと縁が無いようではあるが、国を守るためにはミサイル防衛だけでなく、いざという時の有事への備えが欠かせない、が、どうであろう。
政治がもたらした停滞は人口減少と高齢化社会への対策が遅れている。何より、国民には高福祉のための税ではない税のような負担が多くのしかかり、我が国 の宿命であるかのようなプロバガンダが進められている。高齢化社会は高負担であるのか。一人当たりGNPは順調に成長しており、世界10位以内まで高まっ てきている。所得は伸び悩んではいるが、高齢化によって失業の脅威はない。若年層の増加は現役世代の交代を促進させて、失業問題を起こすがそうではないの だ。
平均年齢の上昇による医療費は増えるだろうが、育児教育費用よりは少ないはずなのだ。5~15歳と65~70歳のどちらが生存費用がかかるかは明 らかで、少子化社会は現役世代の負担減になり、同時に一人当たりGNPの伸びがまたそれを促進する。成熟社会は現役への負担が上がる、というロジックには 疑いが多いのである。
経済成長は昭和30年から構造変革を遂げながら推移してきている。製造業から流通業へ、そして今サービス業への転換である。途中、産業人口減少の 対応策として金融立国を目指してきたが、我が国では失敗した。国営銀行のハゲタカファンド事件に代表されるように、金融は雇用も税収ももたらしてはいない のだ。金融ビッグバン発祥のイギリスでは、ウィンブルドン現象として欧州金融機関の登場により、雇用と税収を確保した。テニスプレイヤーはイギリスにはい ないが、世界からの観客観光収入と雇用が確保できたのである。
金融立国の夢は失せても新たなサービス産業がこれからの日本を支えてゆくのである。政策はどこにも見当たらない。100万社ベンチャー育成制度が頼りなのである。
(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント・花房陵)