物流が救う日本産業 − 第12回 政治と物流不動産『政権交代で何が変わるか』
ダイエー凋落のインタビューをNHKが放映していた。艶のない顔色で中内社長が過去を語り、今を語っていた。日本一の小売王終幕の場面である。
「大きな店を作ってお客様に喜んでいただけると思ったのです。そうではないと気づくのに遅れたのです。これからは前ダレを下げて御用聞きに行く、小売の原点を探さねばなりません。・・・・」
大量消費と大量生産がずいぶん昔に終わっているのが明らかなのに、小売やデパートはその傾向を変えようとはしなかった。コンビニエンスも地域に同 じ商品を大量投入して、消費は横並びで茶筒のように同じものだけが売れ始めて売り終わると証明した。長年のヒット作は古来日本の伝統商品であるオニギリと お茶。工夫も変化も全くなかった。
それが今、先の見えないデフレが続き、産業がしぼみ込んでいる中で兆しを見せているのが女性の購買欲と通信販売である。いつでも買える、面倒がな く、嫌な店員と顔を合わせる必要もない。よく知っている商品だから説明も不要だし、価格もネットで比較しているから間違いない。「ワタシはベストバイヤー なのだ」という自負が裏付けして、賢い消費者は売る側のどんな提案も説明もいらないと言っている。これが顧客の姿であり、ならば自分も顧客になったつもり で売り方を変えてゆくしかない。
高い地面に店を構えるのでなく、看板とショールームだけを証明のために開いておき、販売はネットと物流で行うのがこれからの通信販売の変化である。
返品率の高さは顧客のせいではなく、売る側のウソや曖昧さのためだからだ。
色やサイズの期待を裏切らない方法、見た目と印象イメージが間違わない方法、質感と品質を正しく表現する方法、ネットやTVでできないことは現物 店舗で見せれば良い。高額なら試着や使用をレンタルやリースで出来るようにすれば良い。モノを売るのではなく体験や物のある時間を売るのだ。
コトを売る、つまりは欲望を解決するソリューションがこれからのビジネスモデルになる。買い物は常に物流が伴ない、玄関先や引取りと交換が当たり前になる。一度売れば、二度三度と使えるように預かっておく商品が必要なのだ。
顧客の生涯に販売を続けるのは、生涯のイベントを司ることになるのだ。
(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント・花房陵)