現在過去未来の視点 − 第7回 物流不動産営業12の心得
時間は容赦なく過ぎてゆく。過去は変えられず、現在は制御できない。明日は不確実だ。
愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶという。現在過去未来は誰でも手に入れられる経験と事実の時間の流れでもある。問題なのは、見えども見えず、聞けども聞けず、覚えても忘れることである。
女神のお気に入りになるには時間の流れを振り返り、歴史を知り、明日を計り、あさってを描くことにある。何事も筋書きがすべてであり、瞬間の勝負はすで に時間の流れで決められている。ちょうど筋書きが台詞によってクライマックスを迎えるように、過去から近未来までのシナリオがすべてなのである。
女神に提案と説得とあなたの勝機を得ようとするなら、過去は変えられず、明日は不確実であってもその先は描くことができる事を知ることである。
ノートPCを予想していたアラン・ケイは、自分にとっての未来は作り出すことができるとビジネスと生活を描き続けた。迷い多い時代ではあるが、如 何に歴史に学ぶといえども戦国武将の人生は励みになってもビジネスには応用できない。マクロを調べ、ストックの時代に入ったことを知りながら、今日のフ ローを明日へ引き伸ばすことはできない。今日のビジネスがそのまま明日へと続くと考えるシナリオは無効なのである。
右肩上がりの経済が終わっているのに、成長率を使ってビジネスを考えたり、規模を想定することは不可能だ。一回り小さなスケールで最適な設計を提案することこそが、歴史を踏まえた未来作りになる。女神の住むべき王宮ははるかにコンパクトでなければならない。
物流は量の科学であるが、その大前提がもはや失われていることを知らなければならない。物流コストは規模の指数であり、スケールの縮小がそのままコストダウンにつながる。小さなセンター、少ない要員、短いリードタイムで配送網を再設計することが歴史のシナリオなのだ。
過去がどのようなものであっても、現在がどれほどの規模であっても、明日は今日の延長であっても、その次はシナリオで描くことができる。規模の拡大で成長するのは人口ボーナスであり、失敗を吸収するチャンスであった。
人口も世帯も企業拠点も縮小するから、ボーナスはオーナスとなってチャンスを奪う。
何とかなった時代はすでに終わり、着実な時代認識と歴史を踏まえたシナリオが必要なのだ。スケールダウンで描く確実な提案が、女神にとっての転機だと言うことを繰り返し伝えてゆかねばならない。コンパクト・スマートとというのがこれからの切り札なのだ。
(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント・花房陵)