物流不動産ニュース

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海外経験を積んで、日本の物流の良さを見直そう 

 最近、日本人で海外へ留学する人が減っている。物流業を含め、多くの産業が海外進出を加速させる中、時代を担う若い人たちが、海外留学を避けるのは大変残念に思う。
 留学の良さは、世界には様々な文化、信仰、生活習慣を持った人々がおり、日本人の価値観がすべてではないのがわかることだ。多様な価値観に揉まれるうちに、日本の良さを見直す、発見することにもつながる。さらに、頭が柔軟になり、グローバルビジネスで活躍できる強靭な思考が養われる。
 ある企業で現地法人に駐在した日本人が、現地スタッフから宗教上の習慣で、お祈りの時間を設けてほしいという要望があり、びっくりしてしまったという話を聞いた。物流企業が海外展開を加速させれば、同様な事例に行き当たることもあるだろう。その時、海外の様々な習慣に理解があれば、彼らの宗教、生活習慣を尊重した現場の体制を検討できる。「郷に入っては、郷に従え」ではないが、宗教上の習慣を根付かせているスタッフに、日本流の物流現場はジャスト・イン・タイムが基本、お祈りの時間などないと言っても通じない。彼らの宗教、生活習慣に一定の理解を示すことも、その国でのビジネスを成功させるには必要だ。

 また、海外との交流があれば日本の物流や文化の良さを見直すことにもなる。以前、欧州のビジネスマンを日本の物流現場へ案内したところ、盗難もほとんどなく整然とした現場に大変感心していた。海外では、貨物から目を離せば、あっという間に盗難の被害に遭うし、梱包も日本ほど徹底していないというのだ。日本人にとって、秩序の守られた現場やきっちりとした梱包は当たり前だが、外国ではどこでもそうとは言えない。
 さらに、日本人の行う物流業務は、几帳面なため時間がかかり、非効率的だという意見もある。だが、日本人は、お互い時間通り間違いなく作業をするという信頼感に支えられ仕事をしている。この信頼感はどんなセキュリティーシステムよりも安全で、次々に新たなシステムを導入する場合に比べ、費用もトータルで見ると少なくてすむだろう。最新の無線通信の機能を生かしながらも、信頼関係を前提に営まれている日本独自の物流の良さを大事にしていきたい。
 物流業はこれからますます世界へ進出し、ビジネスを展開していく時代になる。若い人たちには、積極的に英語を学んで、海外での経験を積み、新たな発想で日本を引っ張ってもらいたいと思う。

(池田光男・東運開発社長)