戦略会議の成果はどこに − 第6回 国家戦略会議と物流
国家戦略会議の目的と議論の対象は以下の通りだった。産業育成とか助成の枠を越えて、我が国にとって本当に必要な重大課題だけを扱うのが狙いなのだ。
A 震災・原発事故からの復活
1.東日本大震災からの復旧・復興
2.エネルギー政策の再構築
B 経済・財政
1.経済成長と財政健全化の両立
2.新成長戦略の実行加速
3.更なる成長力の強化
C 世界における日本プレゼンス強化
震災対応はすでに着手している。進展の遅さは話題になるが、東北の復興は土木建築インフラ整備によって、確実に需要と供給が拡大しつつある。チャンスは東北にあると言えるだろう。経済特区や特別措置法は幅広く産業振興につながり、次世代の産業をデザインするばかりとなっている。東北は地域全体でアジア各国と同規模である。地方自治の自由度を高め、経済特区として点在する地方空港を国際化してアジアと一体となればよい。1次産業ですら、アジアでならば優れた産品で十分に優位に立てる。
問題はエネルギー対策であり、原発依存からの脱却と同時に使用済み核燃料の処理が急務となっている。世界は福島原発の事故でも第4号炉の使用済み燃料プールの爆発に関心が高いのだ。
原発の是非はともかくも、核燃料サイクルが世界で破綻した現在、使用済み燃料の最終処分をどのように進めるかが、人類の問題であり、フィンランドが深層地層処分を決定してオンカロの建設を推進していながらも100年計画の途方のなさに不安が残るのだ。
天然ガスタービン発電のエネルギー転換効率の高さから、我が国での事例は沸騰アジアやアフリカ、インドへのインフラ輸出産業としての期待が持てる。
本来の国家戦略は産業主導で行わなければならないはずだが、政権交代の安定度に欠ける民主党では、増税目論見が先行している。景気浮揚よりも財源確保に目が向く政治家の信を問う必要が大いにありそうだ。
当面の我が国は、内需開拓ではなくアジア頼りの外需へシフトせざるを得ない。
すべての産業はアジア仕様に衣替えして輸出、現地出張、張り付き立ち上げが最優先となるだろう。すでに100兆円のドル預金が貯まっているから、これらを解放してアジアにジャパンタウンでも作ればよいのだ。
カワイイ、クール、ジャパンブームは依然としてアジアで活気づいている。
韓国が我が国の1/5規模のGNPなのに、デジタル家電、スマートフォン、芸能ショービジネス、映画テレビなどのコンテンツでアジアを席巻しているのを傍目で見るばかりでは情けない。
この先10年間は我々も出稼ぎを覚悟しなくてはならないのだろう。
同時に少子高齢化による医療介護観光などのシルバー産業を、広くアジアに解放した移民化政策のようなボーダレス政策をいかに実現できるかが勝負である。
日本のコンテンツを輸出し、かつての<VISIT JAPAN>宣伝のようにガラパゴスと命名された日本仕様をアジアに解放すべき、開国の仕掛けが待たれるのだ。
(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント 花房 陵)