マネジメントの対象に表現<条文、箇条書き> − 第2回 コントラクトマネジメント(契約)
物流委託契約をゼロベースで作ることはほとんどないでしょう。委託側受託側の双方から、文案を持ち寄りすり合わせ、互いの法律チェックを受けて確定させることが通例となっています。そこでは、細かな表現が互いの関心を集めます。
つまり、物流活動の定義という、「いつから、どこで、どんな風に、どうすれば終わりか」という改めて考えると頭痛がするようなややこしさです。
たとえば、倉庫保管と出荷作業、輸送完了までの一連の物流活動を委託する場合、倉庫会社と運輸会社が別々になることがほとんどです。本来ならそれぞれの契約が望ましいのですが、どちらかだけに契約して連動作業は、再委託条項として済ませる場合がほとんどです。そうしないと、倉庫会社と運輸会社の間にもう一度あなたの会社が関わらなくてはならなくなり、立会か伝票の受け渡しが必要になってしまうからです。
そう、契約の中では商品・製品と伝票という存在が極めて重要な位置を占めることになります。
★甲は乙の物流を受託し、乙は委託する★
こんな条文は昔よく見られたものです。最近は絶対にありませんけど、古い契約書には残っているようです。
たとえば、入荷商品を受け入れて保管する、ということは、実際にはどんな作業と点検が必要になると思いますか。物理的なものとして商品・製品があるのなら、見て分かる、数えて分かる事ぐらいは想像がつきます。製品名や番号などが印刷されていれば、確かめることができますが、トラック一杯の商品・製品が届いたら、どうやって明細や数を確認できるでしょうか。やはり、先方が作成した伝票が必要ですね。そして、伝票通りに商品・製品が確かに目前に存在しているかどうかの検査が必要になります。
そこで、入荷受け取り作業というのは、先方が作成した伝票と現品を確認して、その数量・明細(品名とか番号)を了承して受け取る作業となるのです。
さぁ、ややこしいのはこのようなものと伝票の処理というか、受け取りというか、確認作業を含めて入荷、受け取り、入庫、受け渡し、引き取り、などと様々な用語が交錯するのです。
倉庫の入り口での受け渡しを、入荷処理、倉庫の棚への移動を入庫、などと言うことがありますが、これも日常用語ではありませんから、様々な呼び方と良い表し方があるのです。
仮に、入荷処理を説明しようとしてもこんな感じでややこしいのですから、それに続く一連の物流活動を定義づけようとすると、ニュアンスや思惑が様々に交錯してくるはずです。
商品の到着とはどういうことか。前日に予告はなくても良いのか、予告の方法は電話か、メールか、予定表というペーパーか。伝票の記載項目はどんなものがあるのか、項目に不備があったらどうやって確かめられるのか、聞く相手がいるのか、いつ問い合わせれば良いのか、その方法は電話かメールか、回答は即日か。
改めて物流委託の定義を明らかにしようとすると、かなり曖昧で、なぜこんな表現なんだろうと不思議に思うことがたくさんあるはずです。
★甲は乙の商品を受け取り、安全な方法で保管する★
こんな条文があれば、受け取るとはどんなことか、安全とはどんな施設を指しているのか。保管とはどのような状態を指すのか、いつまでの約束なのか。・・・・・
どちらの都合や思惑がなくても、用語の説明によって物流活動を定義づけることは本当に大変なことなのです。改めて身近にある物流契約書を眺めてみて下さい。そして、そこに書かれている表現の曖昧さと危うさに気づいて欲しいモノです。
(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント 花房 陵)