物流不動産ニュース

物流、物流不動産、倉庫を網羅した
最新ニュース・情報を発信しています。

  • メール会員情報変更
  • メールマガジンバックナンバー
  • ニュースメール配信登録

子供向け物流見学会で現場を知ってもらおう 

 物流は最も人が関わる仕事である。だから面白くやりがいがある。
 常日頃、物流現場を見るたびに、物流事業者と荷主、一般消費者の理解と思いやりがあってはじめて、円滑な物流が実現するということを感じている。東日本大震災時、物流の果たす役割の重要性がクローズアップされた。緊急時に限らず、平時にも一般消費者に、物流は国民生活のライフラインであり、重要な役割を果たしていることをわかってほしい。お金があっても物流が止まれば、スーパーやコンビニエンスストアで買い物をすることはできない。また、物流業界も自らのビジネスを一般消費者に理解してもらえるようアピールする必要がある。
 ヤマト運輸の宅急便が、これほど国民生活に密着し、成功しているのも一般消費者の利便性を向上させている身近な物流事業者、宅急便として理解を得ていることが大きいと思う。一般消費者と直に接するドライバーをきちんと教育していなければ、企業イメージが大きく損なわれてしまうため、同社の企業の現場力強化、イメージアップには、ドライバー教育が決め手になっている。社訓の一つは「思想を堅実に礼節を重んじるべし」と定められており、礼儀を守ることの大事さをうたっている。一般消費者に信頼してもらえるような礼儀正しさがあってはじめて、時間通りの正確な配達や貨物の破損の少なさが生きてくる。
 また、ヤマト運輸は東日本大震災後、宅急便1個につき10円寄付するチャリティを始めた。これは「宅急便ひとつに、希望をひとつ入れて」をキャッチフレーズに、一般消費者に人間を大事にしている企業であることを大きくアピールした。約1年間で142億円以上を寄付したという。忠実な信念ある経営が人を引き付けている。

 さらに、物流業界団体でも、子供のための物流見学会を開いているところがある。港や倉庫、物流関係の史料館などを見学し、両親の仕事場を知ってもらう試みだ。こういった会は、どんどん実行してもらいたい。物流を見て人と人の心の豊かさ、思いやりが物流を支えていること、宅配便に比べると目にする機会の少ない物流の実態を少しでも知ってほしい。物流の現場を子供の頃から知っていれば、物流業界への理解が深まる。ジャスト・イン・タイムの裏側で努力している物流事業者の苦労、その弊害などもわかるようになれば、むやみに貨物の到着の遅れやささいな汚れにクレームをつけるようにはならないだろう。やさしさと思いやりを持って人に接することができるはずだ。輸出入、流通加工、運送など物流にまつわる様々な工程を想像できる大人になれるよう子供の頃からしっかり学んでほしい。そして、頑張っている物流業者の皆に感謝の気持ちを忘れない優しい大人になってほしいと思っている。
 また、物流事業者も消費者に喜んでもらうような物を作っている製造者の気持ちを物と一緒に届けることを目指せば、物の取り扱いも丁寧になる。その結果、届け先からもの喜ばれ、皆が感謝の気持ちで結ばれる社会を築けると思う。物流を通じ、やさしい感謝の気持ちの循環を目指したい。
 
<プロフィール>
 池田光男 1969年5月米国オクラホマ州立大学大学院卒業後、米国での会社勤務を経て、71年11月東運開発専務取締役、87年5月代表取締役に就任。72年4月東京倉庫運輸社長室長、89年6月常務取締役、91年6月取締役副社長などを歴任し、現在、東運開発代表取締役社長。Council of Supply Chain Management Professionals(CSCMP)会員、国際委員などを歴任。