安全と5S − 第3回 現場のスローガン 物流改善12の視点
事故対策や5S運動に必要なのは、プロ意識と行動、恥と誇りの気概なのです。自分の持ち場を安全に、少しでもキレイに整理整頓するのは、「ここは自分の持ち場だから」という理由が全てです。
『ここは会社、自分の家じゃないから』という気持ちが残っていると、誰かがやってくれるだろう、という他力本願になってしまいませんか。
安全対策は物流部門では憲法として常に意識されていて、誰もがいつでも気に掛けているし、朝礼でも終礼でも、年度始めでも新人への説教もいつも行われてい ます。しかし時々事故がおきるし、上司から「だらしないぞ!」と叱られることは日常茶飯のこと。安全も5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)も結果が大 事だから、どんな理由も言い訳も通用しないというのが現場の厳しさなのです。
うまくできない理由があるとしたら、それは当事者意識、自分の責任を感じているかどうかかのです。
昔、南極観測船の越冬隊隊長だった西堀栄三郎は隊員に向かって激を飛ばしたそうです。
「恥知らずになるな!」、船の隊員には学者や学生、自衛隊や役人、研究者ばかりだけでなく、料理人や医者まで雑多な人種が呉越同舟しています。船室は狭 く、二段ベッドの隅っこに私物や研究器材を置くしかないのです。貴重な器材や研究書を開きながら、数ヶ月の航海を続けてから、ようやく南極に向かうので す。男だもの、雑然としてしまうのは仕方がない、・・・。
狭い船内ではすぐにモノがあふれる、だらしない人がいたら大変な状況になってしまうのは目に見えています。頭も良く、訓練された自衛官や全くの素人が同 居するわけですから、命令やルールなんていうのは聞く人次第。「整理整頓」と号令を掛けても、「これでいいんじゃない?」と士気は緩みがちでした。
「あれをしろ、これをするな、これはコーする、あーする、・・・・」指示命令にはきりがなく、かといって統率取るのもイライラが講じるばかり。
そこで考えたのは「自ら誇りを持って職務に当たる」ということだったのです。職場という船の中や基地の中で、どうすれば誇りを維持できるか。
だらしなくなる気分を抑えて、いつでもどこでもきちんと振舞えるようにするには「誇りと恥」、という号令が効果的だったそうなのです。
「分かっているけど、やってない」「そんなことより、ほかの事」という言い訳を許さず、しかも自律させるには、自らの職務に誇りを持つ以外にはない。自 分の職場、仕事、持分に対して誇りのある姿勢を持たせること、そのことが「見た目に美しい5Sの姿」であり、基本動作をないがしろにしない安全対策の最も 重要な要素だったわけだという逸話が面白いですね。
(イーソーコ総合研究所主席コンサルタント 花房 陵)