通販物流の関通▼社員教育に注力し成長 
2010年01月18日 【物流ウィークリーhttp://www.weekly-net.co.jp/】「人に投資は惜しまない。どんなに良いシステムを入れても、最後は『人』にかかってくるから」。
関通(本社=大阪府東大阪市)の朝倉寛士常務(写真)はそう断言する。通販の物流部門を担う配送センター代行で成長し、現在はネット通販の物流を請け負っている同社。
品質、環境のISOはもちろん、プライバシーマークも取得しているが、同社に荷物を委託している荷主は、認証の有無だけではなく、働くスタッフの姿勢を評価しているようだ。
センターに入るや否や、各方面から飛びかかってくるあいさつの声・声・声。「言わされ感」が感じられない彼ら彼女らの気持ちの良いあいさつが、現場の雰囲気を物語る。
社員もパートも関係なく、てきぱきと動きながら、しっかりと周りの状況を確認していることが伝わってくる。センター内の廊下に掲示されている、スタッフそれぞれが書き出した目標には、管理者クラスが考えるような「生産性」「粗利益」「お客様満足度」などの単語が並び、高い意識付けが行き渡っていることがうかがえる。
5Sが徹底され、掃除が行き届いたフロアには、ゴミはもちろん、業務に不要なものは一切置かれていない。机の上に置いてある本も、現場改善に関するビジネス書だ。
この掃除と整理整頓が行き届いたフロアを維持することを同社では、「環境整備」と定義。月曜から土曜までの午前9時から毎日30分間、すべての従業員で清掃活動を行っているという。「掃除はすべての基本との考えから、業務時間内に実施している。自分が仕事をする場所をきれいにすることで、新たな『気付き』も生まれる」
また、毎週月曜と火曜に、「早朝勉強会」を開催し、社長が講師となり、会社の経営理念や方針、クレドなどについて講義。業務の都合で出席できない場合を考慮し、両日とも同じ内容の講義が行われている。」
強制ではないが、ほぼすべての社員がどちらかの曜日に出席しているという。これには会社側の仕掛けもある。「1回参加するごとに500円、半期ごとにまとめて渡している。半期中のすべての週に出席すると19回で9500円になり、会社から500円上乗せして1万円を渡している」。さらに、水・木曜も午前8時30分から常務が講師となり、現場改善や業務の標準化に関する勉強会を開いているという。
厳しい競争が繰り広げられる通販物流市場を主戦場としながらも、この10年で売り上げが約5倍になった同社の強さの源泉は、徹底した仕事への姿勢にあるといえる。同常務は、「まだまだやるべきことは山ほどある。動きを止めることはできない」と語る。
関通は昨秋、新たな経営計画のスタートに合わせ、新卒採用の開始を決めた。「受け入れる側の体制も重要」と、組織開発コンサルを展開するソリューション(大阪市中央区)の支援を受け、リーダー研修を実施。8人の中間管理職が半年間の活動に取り組んだ。
さまざまなプログラムを実施したが、「部下とのコミュニケーションをとる」という課題では、「いかに自分たちができていなかったかを思い知らされた」と朝倉寛士常務は語る。「部下との距離を縮め、チームワークを再構築する良い機会になった」。
活動をサポートしたソリューションの高畑美菜氏は、「社員教育に熱心な会社で、非常に前向きな方ばかり。参加されたリーダークラスも、自ら『ステップアップしたい』と高い意欲を持たれていた」と振り返る。
朝倉常務は研修の成果を「想像以上」と評価。「自発的に業務時間外でもミーティングを開くなど、リーダーたちの横のつながりもできた」という。「研修の仕上げとして、『Kantsuリーダー宣言』を参加者全員でまとめたが、本気の議論を交わし、喧嘩寸前の所までいった」ほど。
リーダーがまとめてきた宣言は同常務の予想を超えていた。「経営サイドから見ても非常に良い内容。自立心が生まれてきたことを感じ取れた」。
研修費用はかかったが、同常務は、「十分な費用対効果が得られると確信している」という。「人の成長はお金では測れないが、今後、会社に貢献してくれるはず。『人』に投資するコストを惜しいとは思わない」。
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