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PB商品、食品流通に「地殻変動」▼物流には〝諸刃の剣〟 

2013年05月01日

 【輸送経済(http://www.yuso.co.jp)】
中抜き・単価下落は痛手
 小売りの成長をけん引するPB(プライベートブランド=自主企画)商品。食品でも市場拡大が見込まれるが、基本は「安さ」が売り。より高価格なNB(一般のメーカーブランド)商品市場の縮小、さらに流通過程で卸を介さないことで、物流のパイはしぼむ。メーカー・卸物流が縮小すれば、PB市場拡大の恩恵を受けるための小売り物流の獲得競争が、一層激しさを増すことになる。
 「冷凍食品メーカーの間で話題が持ち切り」と業界関係者。スーパー、コンビニを中心に取り扱いが拡大するPB商品のことだ。「中身はほぼ同じでも、減量などして、安くつくり安く売る。小売りが開発・流通を手動し、小売りはもうかるが、メーカーは採算悪化。だが作らないと製造ラインが回らない」(関係者)。
PB食品市場5年後3.2兆円
 このPB商品、小売り各社の戦略はどうか。食品・衣料・生活雑貨など内訳は明らかではないが、最大手イオンの平成25年2月期の「トップバリュ」の売上高は6816億円、2番手のセブン&アイ・ホールディングスの「セブンプレミアム」は4900億円。イオンは商品売上全体に占めるトップバリュの割合を、20%弱から将来は30~40%に。セブン&アイは28年2月期のセブンプレミアムの売上高を1兆円に拡大する方針。
 食品市場でのPB拡大の流れは、富士経済の予測にも。国内PB食品市場は、24年の約2兆6400億円(見込み値)から、29年には21.6%増の約3兆2100億円に。
 定温物流が絡む「日配和風・日配ドライ」「チルド飲料・乳製品」「畜肉加工品」「冷凍食品」の4カテゴリーの合計売上高は、24年の約1兆3600億円から、24.5%増の1兆7000億円に伸びる。
広告・製造コストを抑え安く
 安さを武器に伸びるPBだが、NBより安い理由は何か。まず広告宣伝費が少なさ。次に、仕入値。特定の店でしか売れない中身・デザインのため、在庫は基本的に小売りが買い取る。特注品だが大ロット発注、メーカーの在庫負担軽減の代わりに、小売りは仕入れ値を抑えられる。後は、流通コスト削減。商品を売る店が決まっており、卸を間に挟む必要がない。
有効な手立て、なし?
 流通・物流への影響は。「中身は一緒でも箱は2つになり、ロット割れして、在庫管理・仕分けの手間も倍になる」と複数の食品物流企業。従来の「多品種少量」の流れが一段と強まるという。「1台で運ぶ量は同じだが、単価が目減り」の声も。
影響は業態ごとでさまざま
 「物流はさほど変わらない」(コンビニ各社)というコンビニ向けに対し、スーパー向けでは「(卸を介さない)直送化や、メーカーからの調達物流拡大でコストを圧縮する」(イオン)、「品目などにより条件が違い一概に言えないが、(PB共同開発3社による)物流共同化のメリットも視野にある」(イズミヤ)など、影響は大きい。
 イオンのトップバリュでは、「混載だったのを、要請を受け専用便にしたが、積載効率が落ち収支が悪化した」(中堅食品物流企業)といったPB拡大過渡期の問題も。
 卸の場合、「PBの流通では間を取り持つことはないが、小売りの物流センターを卸で請け負うケースが多い」(日本アクセス)ため、結果的にPB流通に絡む。それでも「商圏は狭まる」(同)。小売りのセンターに納品する際も、商品単価下落は運賃の減少に直結する。
食品物流の「救世主」にならず
 小売り各社は「付加価値型や、新たなカテゴリー創出」(富士経済)にも注力するが、元来PB市場の拡大は「消費者の低価格・節約志向」(大手食品物流企業)が背景。であれば、人口減少の状況下でPBは食品物流市場を拡大する「救世主」にはなれそうにない。
 食品物流市場縮小と、物流現場で起こる非効率化に対し、打つ手はあるのか。「そんなもの、正直ありませんよ」とある食品物流企業。小売り物流を手掛けるか、メーカーがPBの受注を伸ばしその物流を請け負うかすればプラスだが、メーカーからの物流コスト削減要請も、「今後強まる」(同)とみられる。各社は「これまで収受できていなかった付帯作業の見直しを図る」(大手食品物流企業)など、抜本的な対策を迫られそうだ。(矢田 健一郎)