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公取委▼物流センターフィーの負担要請82.1%(小売・卸間) 

2013年08月19日

 【LNEWS(http://www.lnews.jp)】
 公正取引委員会は8月8日、物流センターを利用して行われる取引に関する実態調査報告書をまとめた。
 センターフィーの負担要請については、卸売業者と小売業者間の取引では、物流センターを利用している1159取引のうち952取引(82.1%)でセンターフィーの負担要請があり、うち945取引で負担要請に応じていると卸売業者が回答していた。
 製造業者と小売業者との間の取引では、物流センターを利用している取引990取引のうち692取引(69.9%)でセンターフィーの負担要請があり、うち684取引で負担要請に応じていると製造業者が回答していた。
 いずれの取引においても、小売業者からのセンターフィーの負担要請については、ほとんど全ての納入業者が応じていた。
 センターフィーの負担要請の根拠は、物流センターを利用した取引が行われるようになる以前、納入業者は小売業者の店舗までの配送等を行い、小売業者と納入業者との間の取引価格には、「小売業者の店舗」までの配送費用が含まれていた。
 小売業者が物流センターの開設・運営するようになって以降は、納入業者は物流センターへの納品までを行い、店別仕分け、配送等の作業は小売業者が代わって行うようになった。
 一方で、取引価格は、引き続き「小売業者の店舗」までの配送費用を含んだ価格での取引を行う小売業者と、取引価格を見直し、「小売業者の物流センター」までの配送費用を含んだ価格での取引を行う小売業者がみられるようになった。
 センターフィーは、「小売業者の店舗」までの配送費用を含んだ価格で取引が行われている場合に、小売業者が代わって行うようになった物流センターでの作業等と店舗までの配送等に要した費用として、納入業者に要請しているものである。と小売業者から説明される場合がある。
 卸売業者と小売業者との間の取引では、物流センターを利用している1159取引のうち、小売業者との取引価格に含まれている配送費用の範囲が「小売業者の物流センターまで」であると卸売業者が回答した取引は403取引(34.8%)、「小売業者の店舗まで」であると卸売業者が回答した取引は742取引(64.0%)だった。
 センターフィーが、小売業者が代わって行うようになった作業等に要した費用だとすれば、「小売業者の物流センター」までの配送費用を含んだ価格で行われる63取引においてはセンターフィーの負担の要請は行われないはずであるが、403取引について、物流センターを利用していることを理由とするセンターフィーの負担要請の有無、当該要請に応じているかを聞いたところ、「負担要請があり、応じている」が260取引(64.5%)であった。
 また、製造業者と小売業者との間の取引では、物流センターを利用している990取引のうち、小売業者との取引価格に含まれている配送費用の範囲が「小売業者の物流センターまで」であると製造業者が回答した取引が454取引(45.9%)であった。
 454取引について、物流センターを利用していることを理由とするセンターフィーの負担要請の有無、要請に応じているかを聞いたところ、「負担要請があり、応じている」が235取引(51.8%)であった。
 さらに、そもそも物流センターを利用していない取引においても、小売業者から物流センターの利用を名目とする協賛金等の負担要請を受けたとの回答が、卸売業者と小売業者との間の1926取引のうち物流センターを利用していない753取引では22取引(2.9%)、製造業者と小売業者との間の1、370取引のうち物流センターを利用していない365取引では6取引(1.6%)でみられた。
 このように、センターフィーは、小売業者の説明とは異なり、「小売業者の物流センター」までの配送費用を含んだ価格で行われる取引や、そもそも物流センターを利用していない取引においても、納入業者に対して要請されている事例が少なくない。
 センターフィーを要請について、「1.センターフィーの負担要請の際、事前に協議の機会が与えられず、算出根拠、使途等を示されなかった」「2.協議の結果十分納得しておらず、センターフィーの負担額が直接の利益を上回る水準となっている」といった問題がみられた。
 特に、1.の割合が、卸売業者と小売業者との間の取引では38.8%、製造業者と小売業者との間の取引では27.9%となっていた。
 2.に関しては、納入業者からの回答において、納入業者が負担の要請に納得していない理由として、「センターフィーの額(率)について小売業者から一方的に示され、合理的根拠を説明してもらえなかった」が最も多くなっていた。
 さらに、物流センターの利用によって納入業者が負担する配送費用や製造に要する費用がかえって増加しているといった事例もみられた。
 これらの調査結果を踏まえると、センターフィーは、内容そのものが曖昧で、合理的根拠等がない中で負担を要請されている場合があるほか、事前に協議の機会が与えられず、算出根拠、使途等を示されなかった、またはセンターフィーの負担額が直接の利益を上回る水準となっていることにより、優越的地位の濫用となり得る場合があると考えられる。
 このため、小売業者が、納入業者に対し、センターフィーの負担を要請する際には、納入業者に対して不当に不利益を与えることとならないよう、負担額とその算出根拠、使途等について、当該納入業者との間で事前に十分に協議する機会を設けるとともに、当該納入業者が得る直接の利益等を勘案して合理的であると認められる範囲を超えた負担とならないように留意する必要がある。
 このことは、取引開始時又は物流センターの運用開始時に、センターフィーの額(率)を定める場合だけでなく、一旦定めたセンターフィーの額(率)を引き上げる際にも当てはまる。
 調査結果について、公取委では、優越的地位の濫用につながり得る行為がみられた取引における留意点をあげている。
 卸売業者と小売業者との間の取引、製造業者と小売業者との間の取引、製造業者と卸売業者との間の取引それぞれについて、取引依存度、年間取引高が高い取引先との取引において、優越的地位の濫用につながり得る要請がみられた取引の割合が高くなるという傾向がみられた。
 小売業者、卸売業者が、自社との取引依存度、年間取引高が高い納入業者に対して、センターフィー等の負担の要請を行う場合、納入業者は、自社にとって不利益となる要請であっても、今後の取引に与える影響等を懸念して当該要請を受け入れざるを得ないと考える可能性がある。
 小売業者、卸売業者が、センターフィー等の負担の要請を行う際には、こうした可能性を意識しておく必要があると考えられると指摘している。
 公取委では、物流センターの設置に伴い、小売業者が卸売業者、納入業者とに対してセンターフィーの具体的な負担額と算出根拠、使途等について、明確に示さないまま負担を要請したり、物流センターの利用によって納入業者に範囲を超えた額の負担を要請する場合は、納入業者に不当に不利益を与えることとなりやすく、優越的地位の濫用として問題を生じやすいとしている。
 また、センターフィー以外にも、小売業者が一定数量を指定して物流センター内に在庫を指示する商品について、小売業者の一方的な都合で、必要以上の数量の保管を指示、在庫量より著しく少ない数
量しか実際に発注しないといった取引の条件を設定し、相手方に不利益とる場合があるとの問題も指摘されている。
 このような状況を踏まえ、物流センターを利用した取引に焦点を当て、その実態を把握するため、調査を実施した。
 調査では、卸売業者と小売業者との間の取引、製造業者と小売業者との間の取引、製造業者と卸売業者との間の取引を対象としている。
 卸売業者と製造業者は、食品または日用品を対象で、売上高10億円以上の2000社を対象に調査票を送付し、書面調査を実施した。
 小売業者は、売上高が100億円以上の500社を対象に調査し、書面調査を実施した。
 回収状況は、卸売業者2000社に対し865社(回収率43.3%)、製造業者2000社のうち857社(42.9%)、小売業者500社のうち306社(61.2%)だった。