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物流施設発注が急増▼道路整備、増税 背景に 

2013年11月16日

【輸送経済】
 国土交通省が毎月発表する建設工事受注動態統計調査によると、ことし9月に運輸・郵便事業者が建設大手50社に発注した倉庫・流通施設の工事は総額446億1800万円。昨年来、例を見ない高水準となった。
 物流施設への投資は、経済衰退の影響で一時低迷していたが、最近は増加基調に。物流施設に対する機能強化や集約化・効率化といったニーズの変化も背景に、今年度は5月を除き前年を上回る発注額が続いている。
 9月の発注額が大幅に伸びた理由を、国交省総合政策局建設統計室は「(1)圏央道など幹線道路の整備が進んだことによる沿線の物流施設開発の機運(2)消費税増税をにらんだ駆け込み需要――の2つが後押ししたとみられる」と説明。関西での86億円規模の案件をはじめ、10億円規模の大型案件が複数重なった。
 物流施設の建設需要は、運輸・郵便事業者以外の業種でも活況。ファンドを含む不動産事業者の9月の倉庫・流通施設発注総額は63億7100万円。製造業、卸・小売業、サービス業による発注も合わせると、需要規模はさらに膨れ上がる。「今後、消費税の10%への増税を前に、発注増は継続するのではないか」(建設統計室)。
建築費用高騰で計画再考も
 一方、事業用不動産を扱うシービーアールイー(=CBRE)は先月発表した市場予測の中で、「建築コストの高騰で計画見直しや施工会社の変更が図られており、設計段階にある26年後半以降の案件では、しゅん工時期が遅れる可能性が出てきている」とした。
 同社によると、建築コスト増の主要因は東日本大震災による復興需要に人材が流れ、人手不足から雇用単価が上昇していること。投資額の負担増を受け、土地は取得したものの建設時期を延期したり、施工会社を大手総合建築事業者から中堅事業者に変更したりするなど、事業者は建築計画の見直しを検討。
東京五輪で人手不足さらに
 「当初予定していた5階建てを4階建てに縮小するといった検討をしている事業者もいるが、しゅん工後の収益力も低下してしまうため、見極めが難しい」(CBRE)。
 建築事業者で構成される日本建設業連合会は、「もともと建築業の人件費は他業界に比べ安かった。需給の不均衡があれば、人手を確保するために賃金増はやむを得ない」とコメント。
 東京オリンピックに向けて首都圏のインフラ整備が活発化すれば、人手不足がさらに進む可能性もあり、今後の動向が注目される。 (村山 みのり