延 嘉隆の物流砲弾<2>物流事業者の経営者は儲けることに心血を注ぐべき! 
第一回連載で紹介した物流不動産ファンドの記事。おそらく、物流業界の大半は、所詮、物流不動産ファンドの話、他人事と考える。しかし、その感覚こそがクレージー。ビジネス感覚でいえば論外。物流マンである前に、ビジネスマンとして失格であることを指摘したい。
「あなたたちは、物流不動産ファンドより、
何倍も、
何十倍も、
物流に詳しい筈じゃないのか?」
同時に、物流業界から、「本来、物流事業者が手掛けるべき領域を不動産業に攻め込まれている?」「物流不動産ファンドが手にする収益は、本来、物流事業者が手にすべきものではないのか?」との声がなぜ出てこないのか、疑問に思えてならない。
不朽の名作「スクールウォーズ」だったら、「お前ら悔しくないか!歯を食いしばれ!」と、疑問を抱かない全員を殴りたい気分だ。
本来、物流事業者の経営者は、利益を出すこと、儲けることに心血を注ぐべきなのに、自身のチープな頭で理解出来る眼前のこと、薄っぺらい、既存の成功体験程度の改善にしか注力しない。この怠惰な状況こそ、今の物流業界の悲哀の証左だ。本気で努力する気も、イノベーションする気もない経営者としての価値はゼロ。経営責任の放棄でしかない。
物流業とは、表現を変えれば“アウトソーシング業”(BPO/Business Process Outsourcing)。通常、(システム開発やホワイトカラー系の派遣など)専門性が高いアウトソーシングにおける単価は、(無期限の)雇用責任や福利厚生が無い分、雇用した場合より上がる。しかし、物流の場合、単価は下がる。寧ろ、下がり続ける宿命にあると言える。一部、宅配事業者や大手事業者に“値上げ”の動きもあるが、値上げの波が中小・零細まで及ぶとは考え難い。
つまり、既存の発想だけに縛られていたら、そのうち均衡縮小するのは明白。だからこそ、やったことがない領域、新しい発想で事業を創造し続けなければならないのだ。その選択肢の一つが物流不動産であってもいい。
チャレンジしない自身の不甲斐なさを棚に上げ、社員に、やれ改善だの、やれ「ムリ・ムラ・ムダ」を無くせだの、殊更に価値を生み出すワケでもないことにばかりエネルギーを費やし、目の前にある現実を直視せず、なんとなくのやってる感、言葉遊びばかりに興じているのが今の物流業界。愚の骨頂だ。
なぜ、「物流不動産ファンドと金額の桁こそ違うが、こういう儲け方が出来るのではないか?」と考えないのか理解出来ない。中小事業者の肌感に合うように金額の桁を2つ小さくして考えると、例えば2億1900万円の売上の案件で6900万円儲けるような
仕事に、なぜ、手を出さないのか、その理由を教えて欲しい。
●延嘉隆氏プロフィール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
株式会社ロジラテジー代表取締役。
物流企業経営の視点で、財務戦略(事業承継・M&A・企業再生)・マーケティング戦略を融合し、物流企業の価値を上げる物流コンサルティングファームとして評価が高い。
物流企業を中心に、事業承継・相続、物流子会社の売却など、“ロジスティクス”、“卸”、“小売”などの財務課題で、卓越した経験を有する一方で、物流現場に作業員として入り、作業スタッフとの対話に勤しむ一面も。延氏の詳しいプロフィールはコチラ。