【集中連載】アスクル火災を追う(終)今後の提言 
アスクルの物流センター「ASKUL Logi PARK首都圏」火災に関する最終報告書が6月30日、消防庁から公表された。
出火原因はいまだ調査中となるが、廃段ボールを集積する端材室が出火場所と特定された。2・3階のベルトコンベヤで搬送された段ボールを自動投入するため、開口部が上部についた「ハト小屋」と呼ばれる構造。火勢はこの開口部を通して2階に延焼。端材室2階の燃焼は大きく、水平方向への延焼、火災初期の延焼経路になったと見られる。
端材室上部の周囲は防火シャッターが設置され、防火区画が形成されていたが、東側防火シャッターはコンベヤに接触して閉鎖障害が発生。防火シャッターの閉鎖不良は全シャッター133のうち、作動しなかったものが61、コンベヤや物品による閉鎖障害23、倒壊のため原因不明4と明らかにされた。
また、同センターでは複数の爆発音が発生、消防隊員も一時避難する事態となったが、1回目(16日)は3階鋼材製の梁が熱で接続部を押し上げてコンベヤが落下したもの。2回目(19日)は炎の勢いで屋根が座屈、空気の流れが変わり急激に火勢が拡大したものだった。3回目(20日)の爆発音は、保管されていたPCなどの機器のすき間に付着したホコリを吹き飛ばすもの「エアーダスター」が火炎にさらされ破裂したものと判明した。
今回の火災に際して国土交通省では「維持管理指針」として、「防火シャッターの確実な作動に関する対策」で「一定の範囲ごとに断路器の設置」、「アナログ式感知器と電線の接続部分を耐火テープで熱的な抵抗性を向上させる」の2点を提言。加えて防火シャッターに関する維持保全の責任者を定めることも言及した。
コンベヤの設置については、防火シャッター降下を妨げない位置・機構(フェイルセーフ機構)のほか、避難安全性確保のために直線階段までの歩行距離(避難距離)が提言されている。主要構造物が準耐火または不燃材の建築物の場合、30mから最大60mまで。コンベヤ点検に関しても、点検項目適合することを確認するための設置責任者を定めるように提言された。
ロジスティクス・トレンド(株) 水上 健