不況の原因 − 第1回 物流不動産不況と戦略
今月から新しいテーマに入ります。不況を語り、不況を切り捨て、不況が転じた時、猛烈なスタートダッシュを切れるように皆さんと考えてゆきたいと思います。
最初に今を考えます。どーしてこんな事になっているのか。巷間言われていることの本当はどうなのか、不況の原因です。
北京オリンピックまでは世界中が何となく安定成長していたはずなのに、秋口に入りアメリカのサブプライムローンとか投資証券会社のリーマンブラザースの倒産から始まり、GMやクライスラー、保険会社のAIGグループが躓きました。金融危機が原因と言われています。この危機は防げたのでしょうか、それとも突発的な事故だったのでしょうか。金融は実体経済とどんな関係にあったのでしょうか。金融業界が不振になって実態経済は不況になるのは仕方のないことなのでしょうか。
そもそもアメリカの事件が我が国にこんなに大きな影響をもたらしたのは、日本がアメリカという特定巨大荷主に集中しすぎていたからでしょう。日本の好景気と言われていた頃、株価も上がり、企業業績も好調でした。それは輸出関連、外需産業に限られていたわけですが、当のアメリカは環境問題があっても戦争があっても、国内需要はとても旺盛でクレジットなら何でも買える、身分不相応な買い物が得意な特殊な国でした。テロ戦争のはずがオイル利権に変わっていたり、国際平和と言いながら自国の利権に必死なのは大統領が替わっても、あまり大きな改革にはならない様子を見ると、本質の変化は無いのだと思わざるを得ません。
大得意先のアメリカに金融危機、これは結局モノ作りより金造り産業の失敗ということなのですが、そのために日本は莫大な損害を受けています。さらに辛いのは、アメリカの資金を日本がたくさん提供していることに原因があるのです。米国債といういわばアメリカ国家の借金、我が国で言う国債依存の問題は、6000億ドルという日本の出資によってまかなわれています。
アメリカのノーベル賞も獲得した金融技術の源泉は、日本の出資によっているわけですが、この失敗、つまりは金融ビジネスの敗退の結果、我が国の米国債残高は20兆円の為替差損を被ってしまったわけです。(ドルで貸して、円で返して貰うという不思議な契約です)
モノ作りより金造りは、グローバルスタンダードという産業転換のモデルですから、バラ色の産業だったはずです。投資や投機、証券市場は実態がギャンブルのような一か八かですから、誰かと誰かの損得合戦で、損が大きく出てしまったのは、実体経済に必要な金の数十倍が取引されていたからです。日本でも毎日数兆円の貨幣為替取引があって、為替の利益や損が金融機関の利益につながっています。
しかも、100万円の貯金は日本銀行の預かり金4万円を差し引くと、ひとつの銀行で2500万円の貸し出しが可能になるという、お金製造マシンを銀行が持っていることにも影響しているのです。金余りはより高利なチャンスを求めてあちこちに向かうし、金余りの結果として、無責任な投資に向かうのは仕方がないからです。それは不動産にも物流施設にも向かっていましたから、一気に損が出始めたのは、今までの不況とは本質が違っていることの説明になるでしょう。
貿易依存、モノ作りより金造りビジネスにご執心だった企業家たちにとって、大きく風向きが変わったという、不況の原因をしっかりと押さえておきましょう。