我が国の国家戦略 − 第2回 物流不動産不況と戦略
我が国の特徴は国民性に表れています。どこの国より勤勉性が高く、批判や改善を受け入れやすい受容性に富み、一度決めたことはきちんと守り、子々孫々まで疑うことがありませんという再現性が強いのです。この性格が功を奏した時代には世界で第2位まで上り詰めましたが、現在は機能不足、能力の限界点となっているようで、3つ特徴だけでは国際競争力には負けてしまっています。次に必要なのは豪腕とも言える独創性とアイデアなんでしょう。だから再起を期待してノーベル賞もいただけるようになっています。
西に貧しい人がいれば駆けつけてお金をやり、東に戦いの応援が必要と言われれば、弱いけれども助っ人として戦車も飛行機も運ぶ。北にご機嫌が悪い王子様がいれば、国の代表が訪問してご機嫌を取り付けようとし、南に駄々をこねて働くのがイヤと言う子がいれば、先生を送って畑や工場まで作ってあげようとする。世界を舞台にお金と人材を送り続けている日本は、尊敬こそ受けるべきで弱腰だとか非難をうける筋合いなんて無いはずですが、マスコミは日本を悪く書くばかりで、「どこかオカシイ日本人」という本が売れたりしています。
国家戦略の基本に国の安全と発展を据えるのが第一だけど、ミサイルが飛んできても気づかず、国民がせっせとため込んだ税金や資本が為替のおかげでどんどん目減りしたり、むしろ借金が増えるような政治を行っていることに憤慨している国民が少ないのも世界の七不思議かも知れません。
なにより毎年の税収をはるかに超える予算を組んだり、返済のために借金を重ねて将来にツケを先送りするような予算を承認している政治も変。
景気浮揚策に失業率が問題となるなら、みんな公務員に採用すれば10兆円でおつりが来るけど、それはしない。人材補充によって、様々な社会的不平等や民間企業では及ばなかった安全と住宅環境維持や福祉も医療も教育もすべて人手で解決できるのに、小さい政府と誓ったために失業率は放置している。
商売が順調に進まないなら、新しい産業を育成すればよいものを、それは民間に任せておくから監督官庁が不正を働き、お目こぼしを狙った事件が相次ぐ。
GDPと同額の500兆円弱の不動産という資産がありながら、こちらを活かさず殺さずの税法と規制で動きを封じておきながら、700兆円以上のギャンブルにも似た金融ビジネスには税金を掛けず、失敗した金融機関には税金で補填、徳政令を出そうともしている現実には、とても自国と世界の戦略観が欠けているとしか思えません。
批判するのは自由だが、提案すれば。という人がいます。高貴な人、上位にいる人や巨大な組織は批判を受けなければ腐敗すること、歴史の証明ですから開き直るな!と申し上げたい。国家戦略不在の、乗りかけた金融ビジネスにも甘い政治体制では、外需産業や内需産業の復活もかなり先のことになると思うのが自然でしょう。外地へ出向いて日本を見たとき、誰も助け船をよこしてくれない覚悟で臨めば、新しい地球の産業が生まれてくるはずです。または、先進6カ国で遅れてきた産業を探し出せば、日本の成長も見いだせるはずです。
衣料教育農林水産小売商業製造業、自動車鉄鋼住宅食品・・・・さて先進国で出遅れていたのは、情報通信産業であること昔から分かっていて、1995年のインターネット元年から韓国では光ケーブルとネットカフェが国策で充実していたこととは別に日本では携帯電話の規格競争のように出遅れていたことは事実。今でもGNPに占めるICT業界の事業規模は先進6カ国の中で下から2番目の有様です。
今後の景気復興期にはICT業界への追い風が吹くこと確実だし、何より20兆円の電話代と20兆円のマーケットに380万人の労働者(IT業界はワーカーとは言わないかも)の動向がモノを生み、モノが動き、物流が盛んになること確実でしょう。そして、これが日本の国家戦略となり世界へ情報産業の商品とサービスが席巻することで世界での位置づけが変わるのだと思うのです。
(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント・花房陵)