生活基盤は金融収支 themoney(第24 回) 物流マネー70兆円のゆくえ
改めて言うまでもないが、経済活動は国土を守り、生活を維持向上させることにある。経営計画では10年を超える長期戦略を真面目に考える者はほとんどいない。自分が関わっていられるかどうかがわからないからであり、何を中朝しても当事者意識と真剣味に欠けるものだ。
だが、国政だけは違う。国土の侵略と自然災害による崩壊を防ぎ、国民の安泰を維持しなければならない。そのためには数十年にも渡る生活基盤や社会インフラの保全も考慮に入れなければならない。
我が国は明治以降の産業殖産と三国間貿易に代表される工業の国と言われてきた。
実態は小売流通業が450兆円の市場を持つ内需の国。
貿易収支は輸出80兆、輸入80兆の相殺取引であり、外需にチャンスはない。
だからこそ、物流が日本の最大産業を支えている実態を知らねばならない。
成熟化社会を招いたのは人口減少であり、地方産業の低迷と都市の競争激化だった。知識産業が世界の主流になりつつあるのに、我が国の高等教育は先進国とは言えないレベルの大学進学率51%であるのだ。国土の70%は森林、国立公園であり宅地開発を妨害してきた。
家が高いから家族は小さくまとまり、最後には独居老人世帯だけが異常に膨らむのは明らかだったが、放置してきた。
女性の社会進出を阻みながら育児不安、教育費高騰のままで少子化は防げない。子は社会の宝という真理を口にしながら、行政は支援を拒んできた。その挙げ句の現実はすでに手遅れとなっている。もはや人口は増えず、産業は衰退することが明らかになっている。
残された道は、家計に隠された1500兆円の民間資産を投資に向けるしか方法はなく、産業再編と存続確率に従った業界の再構築(リストラ)と再編成(リコンフィギュレーション)が求められている。資金を誘導するには、将来不安を解消できる金融相談サービスの充実であり、過剰相続の回避、税の不公正を糺すことが必要だ。予定されている消費増税によって社会保障費を賄うというが、10%では到底足りるわけもなく、30%では消費が凍結するだろう。
残されていて明らかな税収はトービン税でしかなく、投資と投機という経済活動を認めるなら、相応の負担を強いることが世界の共通認識(為替取引に課税)になっている。つまり、地球規模での世界経済の将来を見るなら、高齢化するアジアを支えることが欠かせず、国境を超えた金融政策同調路線が求められているのである。
<イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房陵>