物流コストは悪者か logistics fee(第28回) 物流マネー70兆円のゆくえ
企業経営に欠かせないコストに、事業場や工場などの物件費用、組織運営のための人件費、そして生産や販売を行うために運ばなければならない物流費。それ以外は投資や原材料に換算されるので必要経費とみなされている。世にいう変動費や固定費なのであるが、原価計算もきちんとしないと罰金になるかといえばそうではない。それなのに、人件費と物流費用だけが悪者扱いになって生きたのは、そこに付加価値が見いだせないからだ。
付加価値とは原材料費用と売価、提供価格の差額であり、粗利というものだ。
粗利を生み出すために原材料を移動して、販売のために輸送するのだが、その前後関係はカウントしないから、「ただ運ぶ」だけに価値はないとみなされてきた。
人件費もこれだけ技術や標準化が進むと、誰でもできる仕事の積み上げで経営が成り立つようになっている。そんなはずはないが、そのように分類することができる。製造も流通も
原材料をインプットすると製品や売上が自動的にアウトプットできるので、経営は関数としか見られないようになっていた。こちらもそんなはずはないのだが、同業他社との差別化や圧倒的な勝利者、独占状態の産業などは存在していないので、みな同じ関数で経営が成り立っているように錯覚されてきた。
今、ロボティクス技術が浸透し始めて、生産、販売、営業活動も自動化が見えてきた。人がいらない経営活動が視野に入るようになってきたのだ。生産工場も販売店舗もわざわわ自衛する必要もなくなり、分業やアウトソーシングで世界中でどんなビジネスでもスタートできるようになってきた。裁定取引という才覚があれば、安い原材料工賃で生産を行い、高く売れる顧客に向けて世界販売を行うことができる。しかも、ロボットや自動機器を利用することで24時間の営業活動が当たり前になってきた。
世界に3分割する緯度で経営拠点を配置すれば、休みなくものを作り、販売し、止まらない活動を続けることができる。
かつてのコングロマリット、世界規模の事業はこのように空間を自在に活用するほどになっている。売上を作るため、利益を上げるために必要な視点は、原材料をどこから集め、どこで作り、どこに向けて売るのか、というロジスティクスそのものである。
この活動を無駄なコストだと思っていたら、世界ビジネスからは取り残されるだろう。調査や分析が行われていない物流関連経費だからだ。
<イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房陵>