物流不動産ニュース

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スクラップ・アンド・スクラップ 

最近、京都で町家が減っているという。背景には全国共通の空き家問題もあるようだが、多くが取り壊されてビルやマンションに建て替えられている。

世界的な観光地となった京都は、不動産価値も上昇中だ。多くの資本が流入し、さかんに開発を行っている。キャッチコピーはいらない。魅力ある京都の町に建つ新しいビルというフレーズだけで、多くの投資家が食指を伸ばしてくるのだ。

しかし町家がならぶ街並みは、京都の大きな魅力のひとつでもある。町家が軒を連ねる落ち着いた街並みにビルがあるから好いのであって、同じような建物が並ぶなかに自分のビルがあってもその評価は上がりはしない。京都においては街並みも重要な資源であるにもかかわらず、その資源の利用を目的とした開発によりかえって資源は減っていくのである。

この問題は、不動産開発に常につきまとう。京都だけではない。閑静な住宅地にマンション、商店街に商業施設、自然あふれる山中にホテルなどその例は枚挙にいとまがない。マンションが建つことで住宅地の閑静な雰囲気は損なわれ、商業施設の出店で商店街は活気を失い、ホテルのために自然が壊される。先人や自然が培い、作り上げてきたものを利用し、その上に乗っかる。結果として、培われ作り上げられてきたものは壊れる。不動産開発には、そんな面も濃厚にある。

不動産を開発する際、コンセプトや売り出しコピーに、その土地の歴史や伝統を謳うことが多い。「伝統を受け継ぐ」とか「歴史を紡ぐ」などはよく目にする語句だ。でも実際にどう受け継ぎ、どう紡いでいるのか、筆者にはどうもピンと来ないことが多い。いっそ「これまでのものは全て壊し、新しい伝統をつくるのだ!」くらいのほうが清々しくはないか。

新しいものをつくろうとすれば、既存のものを壊さなければならない。これは不動産開発の宿命であって、否定はしない。でもね、自分の価値を自分で下げるようなことは、やめたほうがいいんじゃないかなあ。

 

久保純一 2019.06.20