物流不動産ニュース

物流、物流不動産、倉庫を網羅した
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物流政策は何が変わるか − 第9回 政治と物流不動産『政権交代で何が変わるか』

 日本に100の空港が必要か、大型深度スーパー港湾が必要か、第2東名高速、新幹線が必要か、国土を直結する道路網はまだ必要なのか。物流をめぐる論議には国土問題が欠かせない。羽田と成田の空港ポジショニング、関西では関空、神戸、伊丹の使い分け。

 大量消費や高速流通のためのインフラは1964年東京オリンピックの時代で整備完了していた。輸送の主軸がトラックに移行して、道路渋滞やドライ バー不足、名古屋駅がボトルネックとなっていたJR貨物の輸送能力などが課題ではあったか、物量低下のこれからは消費流通の物流インフラは整備完了と言え るだろう。まだ必要なのは環境対策という名の大儀である。制度なら従わねばならず、環境対策も物流制度も必要に迫られるものではない。

 空港、港湾、高速道路網への執着は政治に直結しており、土木建設などの利権の匂いがほとばしっている。物流事業者への助成制度や原材料燃料高騰へ の補助、税制減免はあれば嬉しい制度であって、これにより一時的な産業支援やそれが業界育成になるとは言えない。何より国内物量の低下は避けられず、業界 再編とシェアの再分配は必須だからだ。必要なのは適正規模への収斂であり、M&A支援や事業縮小の相続減免制度だろう。トラック台数の規制強化や 運賃への介入など、自由競争を阻害して産業が発展した試しはない。

 政策論議には古くから大深度物流網や高速道路並行物流幹線の計画があるが、いずれも実現可能性に乏しい。アジアのハブ港、ハブ空港を目指すのもタ イミングを失してしまったし、労働力供給のための外国人門戸開放も一切進んでいない。民主党政権の売り物だった高速道路無料化も失墜して、むしろ料金値上 げに向かっている。

 政策が実効を失えば支援団体も離れてゆく。政権の危うさは夏の選挙まで綱渡り状態であり、次なる政策もおぼろげになった。今や国家100年の大転 換を迎えるにあたり、北欧型高福祉社会なのかもしくは改良型北米自由社会なのかもぶれまくっており、意地のように内需優先の政策とアジア外需主導の実体経 済とが完全に対立している。その中での総合物流施策大綱とは、一体どこに本筋があるのか。

 国内の物流インフラ整備はすでに終了しており、今後はボーダーレス化のためのアジアへ向けてのインフラ移植の場面ではないか。我が国固有の高速、 個別、情報一致・活用、在庫削減の物流を必要としているのはアジアであり、我々の復習成果を求めているのである。経済成長で経験した同じことが今、アジア 全域で求められている。書を捨てよ、街に出よう。本社機能を移転させ、アジアアフリカで活躍する物流マンを育成することがこれからの使命である。利権政策 に頼らず、実体に従い、時流に乗る。求められ応じてゆくことが、新たな星を掴むために必要なことなのだ。
(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント・花房陵)