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約束が当たりまえの社会へ − 第12回 コントラクトマネジメント(契約)

 文書化された契約の作り方、そして権利と義務の履行、そして紳士的な協議事項やその解決手段について整理をしてきました。このような、「言わなくても当然、どちらもすでに合意していた」という、日本風のビジネス習慣がもろくなってきていることを再認識しなければなりません。
 争い事の代表である、言った言わないという素朴な問題から、契約の継続や更新においては、所属社会やそれぞれの顧客からの期待が背景にあることも確認できました。

 今、私たちは訴訟社会の入り口を通過して、コンプライアンスやリスクマネジメントという、今まで経験してきたことのない新たな課題に遭遇しています。だからこそ、食品業界だけの話題だった安全・安心が、すべてのサービスや商品群まで無用な、過剰な品質問題として私たちを悩ましてきています。
 
 そして今年、ISO(国際標準規格)やJIS(日本工業規格)においても、『組織の社会的責任の手引き』などという、道徳修身のようなマネジメントガイダンスが公開される時代になっているのです。いわば企業の未熟さ、知見の薄さ、経験体験の未習を看破しているかのようです。

 終身雇用がなくなり、年功序列組織が崩壊した途端に、当たり前という意味が様々に解釈されたとき、唯一の約束や期待が文書やルールという契約に基づかなければならない社会は、決して幸せなものではないけれど、これこそが時代変化の悪い面の表出であるならば、仕方のないことかも知れません。

 それだからこそ、コンプライアンスの定義が法令だけに留まらぬように、ISOやJISで規格しなければならない事態を憂慮しなくてはならないのです。
企業がビジネスプロセスを徐々にアウトソーシング化して、いわば手も足も胴体も外部に依存するようになり、司令塔と神経繊維だけが自らであると主張するような、企業体そのものが変わってきている以上、契約を考えることは、自らの社会的使命や顧客からの期待まで思いを巡らせなければならないのです。そして、それを丁寧にトレースすることが契約条文の整備となり、同時にリスクマネジメントの想像力を付け加えることで完結する、そんな複雑なビジネスの構造が願わないけれども、必要とされていることに気づかねばならないのです。

 社会が期待している明らかなニーズ、それはどのような国々でも日本の経験が活かされなければならず、日本が先進国として初めて経験する少子高齢化社会での取り組みが、地球規模で広がってゆくためにも経験を記録し、そしてビジネスの契約で双方が成功するというしくみを確立しなければなりません。
 成長が必ずしも量や規模でないけれど、質や内実の成果を実らせるために、社会との約束、企業との約束、顧客との約束を果たすことが成長の条件なのです。
 売上は顧客の支持であり、利益は自らの努力であることは明らかで、そのためのプロセスには多くの明文化された契約も暗黙の約束があることは確かなのです。経営が5つの資源を組み合わせた最高の芸術と言わせるためにも、情報管理や組織基盤の契約の重要性を再び振り返ることをお勧めしたいと思います。

 どのようなビジネス契約においても、業界知見や業種経験の豊富さには法律専門家と言えども叶いません。不安な点、不明なことがありましたらお問い合せ下さい。

(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント 花房 陵)