貨幣と金利 − 第5回 経済政策用語解説
イスラム社会では金利を取ることを禁じています。ムハンマドは天からの恵みや努力以外を認めず、お金の貸し借りに労働や努力を認めていないからです。
かたや、ノーベル平和賞を受けたバングラディッシュのグラミン銀行では、マイクロファイナンスという少額融資に20%もの金利を掛け、さらに隣組のような5人の互助グループで連帯保証をするようになっています。
金利と利息は同じ物を逆から見ているだけで、払う側は金利、受け取る側は利息と呼びます。貨幣は物々交換の手間を省くために、国家や中央銀行が許された特権の元に印刷、鋳造、発行されます。価値は印刷物、鋳造原価のはずですが、信用という価値がついているので額面で示された記号や数字で表されます。
発行された貨幣が、誰かに貸し出されて返却されるときに金利や利息が必要なら、その分の貨幣は印刷されなければなりません。すると、貨幣とモノが交換されている時に、交換の比率が増えなければならず、金利は経済の成長率と同じでなければならないことになる、ということが理解できるでしょうか。
100万円を借りると1年では105万円を返さなければなりません、すると5万円分の貨幣が印刷されるか、100万円で交換できたものが1年後には105万円でなければ交換できないということになります。
ここに、金利と貨幣で示された経済の成長率の原点が見えてきます。とても大切だけど、気付かない点です。
金利は誰の所得になるのでしょうか。印刷する国家ですか、それとも貸出をする銀行や投資家でしょうか。国家が所得を得るなら、徴税や事業収入、勘定や予算など不要で印刷だけすれば、お金がじゃんじゃん入ることになるので、そうしたいが、そうできない理由があります。
金利は銀行と投資家の所得になりますが、1年後の所得ですから、使える価値はちっとも増えていないことに気づかなければなりません。だって、100万円で交換できたものが、105万円になっているのですから、所得は数字だけの意味になっています。金利は所得ではないのです、いえ、実はもっと巨大な所得を隠しているのです。
国家は印刷する時、100万円しか印刷しませんが、銀行は100万円を数十倍も貸し出すことがデキるようなしくみが隠されているのです。それは、信用創造というシステムですし、預金準備率という法律で支えられているのです。
詳しく説明しておきましょう、でもあなたの仕事や経営には無関係です。それを知っても歯ぎしりするだけで、絶対に秘密の全く別の世界だからです。
世の中に出回っている貨幣を、何かと交換して100万円保有したとしましょう。それを銀行に預けると、通帳というか、デジタルデータであなたは100万円を持っていることの照明が行われます。それは、1年後に5万円より少ないですが、確実な利息をもらえる権利を持っていることになります。買い物を我慢して、交換をしなければ1年後に預けた100万円は利息が付いて、増えていることになります。仮に103万円でもいいでしょう、3万円の所得が増えたことに、大満足ですか?
あなたの100万円を預かった銀行は、借りたいという人に貸すことができます。すぐ貨幣を受け取りたい、というでしょうか。ほとんどの人は、通帳や証券に100万円という数字データを記録してもらって、それでしばらくは満足でしょう。実際に貨幣を使う段階まで、銀行に預けています。借りているのに、預けているのです。
銀行は、100万円が手元にあれば、無限に数字データを作って貸し出すことをしたら、それはいけないことなので、ある割合の資金を中央銀行に預けることを強制させられています。それが預金準備率と言って、日本では0.1%です。100万円のうちの1000円を差し引き、銀行には99万9千円があることになりますね。
誰かが実際に貨幣を必要としないで、通帳や数字データで借りたり、貸したりするなら、貨幣は銀行に残り続けます。すると、貸し続けることができますね。
準備率が0.1%だから、100万円は1000倍の貸付が可能です。10億円です。1年後の金利総額は5%で5000万円です。銀行に実際に預けたあなたは3万円の利息をもらいますから、銀行の所得はちょっと減ります!
3万円の所得は、今年の物価が上がっているので、去年の100万円より使える価値が減ってしまっているはずです。銀行の5000万円はどうなっているのでしょう?
金利と経済成長、つまりは物価上昇の起源はここにあり、地球はいつまでも金利の分だけやせ細っていく原理が、資本主義の姿なのです。
(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント 花房 陵)