2010年の物流不動産市場は物流企業が主役に▼実践ロジ「物流不動産部会」 
2010年02月18日 実践ロジスティクス研究会(鈴木邦成会長)が立ち上げた「物流不動産部会」(座長・鈴木邦成氏、運営・木村博之氏)の第2回が2月9日都内で開催された。
▼LPMのマーケットリサーチには、近隣施設との比較、中長期での収支試算、2つの視点が必要
ここではまずトーウンの木村博之氏よりワンポイントアドバイスとして、「ロジスティクスプロパティマネジメントが行わなければならないマーケットリサーチの役割」について解説された。
<写真・マーケットリサーチの役割を説明する木村氏>
木村氏によると、マーケットリサーチ業務とは、①近隣施設との比較、②中長期での収支試算―の2つがあり、①の「近隣施設との比較」については物件のスペックをリスト化、点数化した上で、メリット・デメリットを把握し、ロケーションに基づく戦略・更新費用・敷金などを加味した上で月額、年額コストをみていく。②の「中長期での収支試算」については、年間収支による試算だけでなく、7~10年のスパンによる中長期収支をみていき、投資コストがいつペイになるのかを把握した上で、新規貸借がベストなのか、既存施設を借り続けるのがベストなのかを決めていく。この2つの要素からみていけるかどうかがマーケットリサーチ能力を左右するのだという。
▼2010年の物流不動産市場は09年同様、物流企業が主役に
続いて、イーソーコ総研・企画室広報担当の川嵜勇マネージャーより「市況から見た物流不動産2010」と題した講演が行われた。
<「安価な施設入手で物流企業にチャンスがある」と川嵜マネージャー>
川嵜氏は2010年の物流不動産市場を決める要因として、①不況、②景気回復、③ファンドの撤退、投資額の動向、④中長期的な物流推移、⑤物流企業の動向、⑥環境対応、⑦羽田の国際化、⑧通販業界の動向―の8つをあげ、この8つの要因をみながら、これまでの物流不動産市場と今後の動向を解説した。
まず巷で取り沙汰される物流不動産バブルはあったのかについては、業界関係者の声を総合すると2007年(平成18年)をピークとしてあったと明言。2005年頃から1万㎡を超えるファンド会社による物流施設が現れ、07年には高止まりとなり、08年秋のリーマンショックを契機に崩壊したとの見方を披露した。
市場動向をみると09年はファンド会社が施設を投売りし、大幅な値崩れが起こるとともに、安価な施設を物流業者が手に入れ、主役がファンド会社から物流業者へと入れ替わった時代だという。
2010年については、物流業者は「今年一杯厳しい状況が続く」、荷主企業は「不況が長引き、荷物量は減少、集約化に動く」と今年一杯は回復はないと考えているのに対し、ファンド会社側は「今年末ぐらいから投資を再開したい」とみている。
こうしたズレがなぜ起こるのかというと、大型施設建設の工期に秘密があるのだという。ファンド会社は来年半ばから後半にかけて回復するとみて、それに合わせる形で着工を進めているわけだ。
両者の見方をまとめると、今年一杯は昨年同様、ファンド保有施設の売却が続く一方で、ファンドを活用した物流企業による大型物流施設開発が進む、物流企業への主役プレイヤーの移行が進むとみられる。
また不況によって荷主側にはコスト削減を図るため自社物流からアウトソーシングが活発化。「店舗」から「通販」への移行が進む中で、物流企業にとって、通販業界の取り込みは大きなチャンスとなる。物量の大幅減、コスト削減圧力の続く、厳しい時代ではあるものの、施設を用いた物流品質の確保によって、コストだけにたよらない事業展開はあるという。
このほか中長期をみたときに環境対応(太陽光発電、LED照明など)、羽田の国際化の動向をみていく必要があるとした。