国交省▼災害時フェリー活用 
2012年11月01日 【輸送経済(http://www.yuso.co.jp)】
国土交通省は、災害時にフェリーの救援機能を活用する新たな枠組みづくりを始めた。新たな枠組みでは、災害発生に備えフェリー会社と自治体が事前に協定を結ぶ。国交省は必要な予算として平成25年度で2億円を要求。協定のひな型を示すほか、救援活動に必要な船舶の改造などを助成する。
協定のモデルケースを提示
昨年の東日本大震災。フェリーは自衛隊員、車両、食料、水などの支援物資輸送に力を発揮。車両1万2800台、自衛隊員ら4万6700人を運んだ。人が乗れるフェリーは物資輸送だけでなく、「被災者の一時収容」「救援医療活動の拠点」の役割も期待されている。
一方、フェリー特有の救援機能を有効活用する枠組みは未整備。業界団体や船社が自治体と「緊急輸送協定」を結んでいても、どのフェリーが救援に向かうといった具体的な取り決めが無く実効性が課題だった。
対策として国交省は、今年度中をめどに船社と自治体が結ぶ協定のひな型を提示する。通常航路を離れて救援活動に当たる船社に対し、自治体が平常時の港湾使用料を支援するなどのケースが考えられるという。
船社の設備充実に補助金も
協定締結を前提に、災害対応用の設備・機器を設置する船社への補助も行う。多くのフェリーには船体の横から車が乗り入れする「サイドランプウエー」がないが、普段使っている港以外に着岸する場合に備え、設備の導入を促す。
今後の課題は船社の体力。フェリー業界は高速道路料金の引き下げなどで厳しい経営状況の企業がほとんど。補助があったとしても、枠組みへの参加が困難なことも考えられる。国交省は「フェリー会社の理解を求めたい」としており、各社の動向が注目される。(藤本 裕子)