書面契約のルール化▼来年3月から開始も、まだ残る戸惑いの声 
2013年06月19日 【輸送経済(http://www.yuso.co.jp)】
荷主ら運送を委託する業者と実運送業者の間での契約書面化に戸惑う声が、業界に根強く残っている。来年3月からのルール化に伴い、国土交通省は5月11日からパブリックコメント(意見公募)を始めた。だが事業者からは、早くも書面契約の〝実効性〟に対する質問が上がっている。行政は、事業者の懸念に丁寧に対応することで、理解を求める方針だ。
今回の契約書面化の取り組みは、運送を行うトラック事業者と輸送を「頼む側」が、重要な項目について事前に書面で契約を交わすもの。実運送業者が不要とする場合を除き、荷主、元請け事業者らも運送状を原則、提出する。
書面に記載するのは、(1)運送日時(2)運送品の概要(3)運賃・燃料サーチャージ(4)付帯業務内容――など9項目。荷待ちによる留め置き料や付帯作業料の未収受といった課題が残る中、国交省は輸送を「頼む側」と「頼まれる側」がルールを確認し合うことで、適正取引やドライバーの安全確保につなげたい考えだ。
7月にも必要省令など改正
3月に取引適正化に向けたパートナーシップ会議を開いた後、国交省はガイドライン策定の動きを本格化。関係者から意見を聞き、7月にも必要な省令などを改正する。
ところが、関係者から意見を募るパブリックコメントでは、「書面化でどのような効果が期待できるのか」「運賃・料金の適正収受に効果はあるのか」などの意見も。依然として、書面化に戸惑う事業者がいる実態が浮き彫りになった。
セミナーなどが普及の鍵に
これに対し、武藤浩自動車局長は5月22日の会見で「書面化は実運送の権利を守るもの。荷待ちや付帯作業の解決にもつながる」とメリットを強調。事業者の負担増につながるとの声に対しては、「(誰もが使える)手間の掛からないフォーマット(様式)を作らなければならない」とし、パブコメの意見を反映させていく考えを示した。
国交省では今後、セミナーを通じて書面化を普及させる方針。荷主団体にも協力を要請するなど、「末端荷主までしっかり伝える工夫」(武藤局長)を進める。
だが、今回の書面化は実施しなくても行政処分はない。そのため、実際に普及するのか疑問視する声があるのも事実。契約時の書面交付を業界全体に広げるには、行政がどこまで丁寧な対応ができるかが鍵になりそうだ。(小林 孝博)