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特積みルポ▼京浜トラックターミナルの1日 

2013年06月19日

 【輸送経済(http://www.yuso.co.jp)】
 特積みは、高度経済成長期以来、日本経済を支えてきた。再び強い経済を取り戻そうとする日本の〝最前線〟には、特積みの活躍が欠かせない。全国へと荷物を届ける特積みの一大拠点、京浜トラックターミナルで奮闘する特積み事業者の1日を追った。
夜明け前に業務を開始
 夜明け前の午前3時。静寂の中、にわかに慌ただしさが増す。首都高速を降りた大型トラックが集まりだす。
 バース(トラックの停留所)につけたトラックからホームに次々と荷物が降ろされる。7時には荷物の山。
 ターミナルの中は活気にあふれている。人々が行き交い、方面別に仕分けられた荷物を小型・中型のトラックに積み込んでいく。
 2号棟の信州名鉄運輸(本社・長野県松本市、今井繁社長)のホームには食品を中心に工業製品などの荷物が並ぶ。
 フォークリフトやハンドリフトを駆使し仕分ける。台車に乗せた荷物を丁寧に積み込む。ストレッチフィルムを巻き荷物をまとめる。「特積みは、人の手を介する機会が多い。品質を維持するため、荷物に触れる機会を少なくすることが肝」と信州名鉄運輸京浜支店の枝田啓一郎支店長。一つ一つの作業に、荷物を安全に運ぶための意味がある。
 「荷物それぞれの特性を生かした積み方をすることも大事」と荷積み作業中のベテランスタッフ。配送の順序も考慮し手際よく積んでいく。
 ターミナルの熱気が収まり始めるころには、荷物の山も消える。10時過ぎには、ホームの全容が確認できるほどに。
アベノミクスで荷物動かず
 1号棟のトールエクスプレスジャパン(本社・大阪府吹田市、ニール・ポーリントン最高経営責任者=CEO)のホームも忙しさが一段落。先ほどまでは、安全最優先の一環で蛍光ベストを着用したドライバーが、荷積みしていた。荷物が壁のようだった。「人によって積み方が違う。彼は真面目でうまい」と同社東京中央支店の毛利貴浩支店長は言った。
 荷動きは「横ばい」と毛利支店長。政府の経済政策〝アベノミクス〟の好影響はまだ感じられないという。さらに、円安により輸入荷物、特にケミカル関係で減少の懸念も。
日本経済支え
 荷動きは景気を映す。リーマン・ショックでは荷量が落ち込んだ。景気が回復に向けば荷物も増えた。いま、荷物はほとんど増えていないという。いまだに実体経済に力強さが戻らず、「景気回復には及んでいない」(毛利支店長)。
 現場で感じるのはむしろ厳しさだ。製造コスト削減の一環か、〝もろく繊細〟になった荷物の取り扱いは、一層難しくなった。「例えば、一斗缶など容器の厚さが薄くなった。荷扱いの品質で企業努力が問われている」(毛利支店長)。品質向上への取り組みに余念はない。
 午後4時、構内に慌ただしさが戻る。主役は、大型トラックだ。駐車場からバースへと続々と集まってくる。
 5号棟の丸運(本社・東京、市原豊社長)のホームではソーラーパネルが積み込まれていた。「近頃、増えている」と同社京浜ターミナル支店の山下智之支店長。取り扱いが難しそうにみえるが、「いままで一度も事故はない」(山下支店長)。
荷主の協力が品質の向上に
 他の荷物も含め「顧客が特積みの混載という性格を理解し、それに対応したこん包をしてくれるようになってきた。品質会議などで話し合いを重ねてきた」(同)。
 品質には、荷主の協力も欠かせない。そのいい事例だ。
 無事に荷物を積み終えたトラックがバースを出た。仮眠室から戻ったドライバーとともに、再び全国へと走る。
 11時を過ぎると、ほとんどのトラックが出発した。トラックターミナルもひとときの休息。「日本経済を支えている」(山下支店長)特積みターミナルの長い1日が終わった。
首都圏物流の結節点
 日本自動車ターミナル(本社・東京、村山寛司社長)の京浜トラックターミナル(大田区平和島)は、首都高速・羽田線と湾岸線の出入口に近接。東京港、羽田空港にも近く、陸・海・空のアクセスに優れる。敷地面積は、約24万平方メートル。東京ドーム5個分に匹敵する物流の一大拠点だ。
 昭和43年の供用開始以来、全国各地からの路線網の中継、都市間輸送、都市内の集荷・配送の拠点として機能する。昨年度の荷物取扱量は、1日約5900トン。トラック出入台数は、約2700台。入居テナント数は日本通運、西濃運輸、第一貨物など26社。
今後の再開発計画として、上部空間の高度利用を目的として、環境にも配慮した高層複合物流施設を建設する予定だ。
 「特積み事業者にとってより使い勝手のいい施設」(日本自動車ターミナル事業本部の本田輝和京浜事業部長)へ。京浜トラックターミナルが生まれ変わる。(松井 悠)