ヤマトHD▼企業発小口貨物に照準 宅急便で「物流改革」 
2013年07月19日 【輸送経済(http://www.yuso.co.jp/)】
ヤマトグループは今年度、小口化、多頻度化する企業発貨物の取り込みを加速する。ヤマト運輸(本社・東京、山内雅喜社長)の宅急便を活用。流通在庫を含めた企業の在庫圧縮をサポートする。既存の商業物流市場の切り崩しを図る。
3日の記者発表会。ヤマトホールディングス(本社・東京)の木川眞社長は、個人向けのイメージが強い宅急便に、企業向けでも他社にない強みを持たせることで、「総合物流企業として大きく踏み出す」方針を示した。「〝宅急便〟投入に次ぐイノベーション(革新)」と言い表した。
ヤマトグループは、宅急便ネットワークを用いた「物流改革」を通販、流通・卸、製造業などに提案する。その際ポイントになるのが、宅急便ネットワークを顧客企業が自社の物流網のように使える「FRAPS(Free Rack Auto Pick System)」と呼ばれるシステム。
発送者は可動式ラックに届けたい荷物をまとめて詰め、近くのターミナルに持ち込む。そこで通常は発送者が行うピッキングや配送先ごとの仕分けを、ヤマト運輸が代行する仕組み。事前に商品や数量、配送先データをデジタル化する必要がある。
新システムで物流費を削減
「メーカーが全国に自前で持っていた倉庫の一部をヤマト運輸のターミナルに移すことが可能になり、物流コストを削減できる」(金森均ヤマトロジスティクス社長)。
FRAPSは平成22年9月にスタート。現在、10カ所の宅急便ターミナルで稼働中。
国内の当日配送エリア拡大や、羽田の物流ターミナル建設、沖縄空港を使った国際物流など、この数年強化してきた宅急便のスピードも生かす。アジア各地や国内に分散する部品工場から、組み立て工場ラインへのJIT(ジャスト・イン・タイム)一括納品も可能になるという。
Btoが宅急便の9割以上に
現在、宅急便に占める企業発貨物の割合は約85%。通販など企業から個人に届ける「BtoC」がメーンで、企業に届ける「BtoB」はまだ伸びしろがある。「大口のBtoBは触らないつもりだが、小口・多頻度化したものはしっかり対応していく」(木川ヤマトHD社長)。ヤマトグループは既存市場に切り込む新たな取り組みで、将来的に企業発の宅急便が90%を超えるとみている。(藤本 裕子)