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政府方針に国交省困惑▼運輸部門温室効果ガス削減目標 「25%減、実現難しい」 

2013年12月02日

輸送経済

  CO2(二酸化炭素)の削減目標値に、国土交通省が戸惑っている。平成32年度(2020年度)までに、運輸部門のCO2を大幅に減らす目標を政府が示したためだ。省内からは「衝撃的な数字」といった声が出ている。今後は物流業界の現状などを踏まえ、独自に現実的な数値を検討していくもようだ。
  15日、政府の地球温暖化対策推進本部で示された資料によると、平成32年までに運輸部門が目指すべきCO2排出量は平成17年度(2005年)比25.2%減。工場などの産業が同5.4%増、家庭が同11.4%増なのに対し、運輸だけ削減を求められた形だ。
  理由について、環境省は「原発によるCO2削減効果を含めなかったため」と説明。原発なしで発電すると計算上CO2の排出量が増え、電力を多く使う産業や家庭部門の数値がプラスになったという。一方、運輸部門は燃料が中心で、電力使用量は少ない。「他部門にも当然省エネを求めていく。運輸だけにCO2削減を押し付けるわけではない」(環境省)。

政府会議数日前に案を提示

 だが、運輸部門を所管する国交省では25%という数値が現実的でないとの見方もある。
  実際、政府の地球温暖化対策議論は環境省、経済産業省を中心に展開。32年までの削減目標の原案が他省に示されたのは、15日の対策推進本部が開かれる数日前で「議論に入り込む余地がほとんどなかった」(国交省)。
  トラック業界はこれまで、CO2削減を積極的に実施。車両代替えや営自転換を進め、昨年度は7年度(1995年度)比19.5%減らした。
  業界からは「CO2削減も限界がある」の見方も。都内の事業者は「車両代替えと簡単に言うが、厳しい経営下ではできない。首相の環境政策はどこを見ているのか」といった声が出ている。

独自の数値策定も検討

  現状を踏まえ、国交省はより現実的な独自の目標値を検討する方針だ。現在、今後の温暖化対策の取り組みをまとめた環境行動計画を策定しており、この中で示すCO2削減目標は「25%という数字に縛られず」(国交省)決める考え。
  「今回の目標はあくまで目安であり、決定ではない。環境省も『理解を示してほしい』とだけ言っている。削減数値は業界から話を聞いた上で、今年度中に決定する」(同)。
  政府は原発などエネルギー政策が固まった後、再度削減目標を見直す方針を出しており、今後は省庁間の対応にも注目する必要がありそうだ。(小林 孝博)