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タリフに見直し機運▼特積み業界 運賃値上げへ各社動く 

2014年04月18日

輸送経済

 運賃値上げ交渉が進む特積み業界で「タリフ(運賃表)」を見直す動きが活発になってきた。認可運賃時代から残る古いタリフの撤廃や、コストに見合った新タリフの届け出で、運賃を底上げするのが狙いだ。この数年、特積み各社は「既存のタリフ通りの運賃収受」に力を入れてきた。タリフそのものの見直しで、値上げの流れに一層の弾みがつきそうだ。
 北海道で特積み事業を展開する札樽自動車運輸は2年前から、「昭和57年タリフ」の撤廃に取り組んでいる。同社が大手荷主や連絡輸送で使うタリフは、57年と60年が主流。60年タリフに変えれば約10%の値上がりになる。「値引きしたとしても数%のアップ」(同社役員)が見込める。顧客との交渉を続け、将来的には平成2年→7年と段階的な引き上げを目指している。

なぜか残る〝昭和期〟の運賃表

 荷主と運送事業者の運賃交渉には、旧・運輸省が地方運輸局ごとに公示していた「標準運賃表(公示タリフ)」が現在でも使われている。公示タリフは数年おきに改定され、値上げや上限・下限の範囲拡大が行われてきた。現在、特積み業界で主に使われているのは昭和57年、60年、平成2年、7年、11年に公示されたもの。公示タリフは当時の原価を基に算出されているため、燃料費や車両費が上昇したいま、コストに見合わなくなっている場合もある。
 事業者の中には、タリフそのものの改定に着手したところもある。北信越の特積み事業者はことし3月、約20年ぶりにタリフを改定。東北の特積み事業者も6年ぶりの改定に踏み切る。大手では西濃運輸が昨年改定し、「長距離輸送や重量物の運賃適正化」(同社)を図った。

古いタリフを強制撤廃

 特積み業界はこの数年、低く抑えられていた運賃の改善に力を入れてきた。ただ、現行タリフの収受率を高めることが主軸で、タリフを見直すケースは少なかった。特積み各社が加盟する日本路線トラック連盟によると、「システム上で、昭和のタリフを使えなくする」といった思い切った方法をとる事業者も出てきているという。
顧客への浸透が課題 現行運賃での交渉も並行
 一部の事業者で進むタリフの見直し。一方、いまあるタリフの100%収受ができていない状況で、どこまで値上げにつながるか疑問視する声もある。平成2年に認可運賃制から届け出運賃制になって以降、「改定したタリフを浸透させるのが難しくなった」(路線連盟)ためだ。
 現行のタリフで値上げに取り組むところもある。九州のある特積み事業者は、昭和60年と平成2年のタリフを使用。「新たなタリフをつくる予定はない」(同社営業担当者)という。「顧客にとってみれば、新しいタリフになってどう変わるのか不安がある。いまのタリフで一律の値上げをお願いする方がやりやすい」(同)。
 北海道の別の事業者も、「現時点では、集荷遅れの是正や付帯作業の明確化などで、不採算部分をなくすことが取り組みの中心」と切り替えには慎重。

「将来的には見直したい」の声

 ただ、昭和のタリフが平成の水準にまで引き上げられ、100%収受できれば「十分採算は取れる」(複数の事業者)との認識は共通する。いまは現行タリフの収受率アップに努めている事業者からも、将来的には届け出ている平成のタリフに引き上げたいとの希望は聞かれた。
 「大手の西濃運輸が改定に踏み切ったことで、中堅が追随するのでは」(路線連盟)との指摘もあり、タリフ見直しを通じた値上げ交渉が本格化する可能性もある。

需給ひっ迫が背景に 杉山 雅洋 早稲田大学名誉教授

 「タリフ通りの運賃を収受すること」はトラック事業者の〝悲願〟といえる。昨今のトラック不足(車両、運転者)で、需給バランスから事業者が荷主に対し相対的に強い立場にある。各社のタリフ見直しは、この機会を捉えたものとみることができる。
 業界は事業者が増え競争が激しくなっている。タリフ運賃が「市場運賃」となってほしいのがトラック事業者の本音だろう。タリフ運賃が収受できれば、それをベースに事業計画も立てやすくなるのは確かだ。(藤本 裕子)