増収増益が66%▼上場トラック企業・26年3月期決算 適正運賃収受が進展 
2014年06月05日輸送経済新聞社
上場トラック企業の平成26年3月期決算が出そろった。景気回復による物量増加や消費増税前の駆け込み需要などにより企業収益が改善。9割を超える企業が増収となった。さらに66%が増収増益を達成。燃料価格の高止まりや深刻化する人手不足による人件費高騰などコストが増加する中、コスト構造の改革に加え、適正運賃収受の取り組みが一定の成果を挙げた。
増収増益を達成した上場トラック企業は23社。25年3月期の決算発表時に予測された27社には届かなかったが、同期の13社を大幅に上回る結果となった。
9割を超える企業が増収に
多くの企業が景気回復や消費増税前の駆け込み需要の恩恵を受け、全35社のうち9割を超える33社が増収を果たした。一方、燃料価格は高止まりが続き、ドライバー不足は深刻さを増すなど、依然コストアップ要因は多い。そうした中、各社が進めるコスト対応策が功を奏し、増収を増益につなげた。
日本通運は地域の実態に応じた拠点・人員の配置や、変動費管理の徹底によるコスト構造改革を推進。福山通運は重量と容積の自動計量装置を導入。業務効率化と適正運賃収受に努めたほか、遠距離の不採算荷物選別でコスト削減と輸送効率化に取り組んでいる。
運賃改善交渉に関しては、トナミホールディングスなど多くの特積み企業が実施。一定の成果を挙げている。ドライバー不足や燃料価格の高止まりを機に、運賃改善につなげようとする動きも活発になっている。
27年3月期も好調な業績が続きそうだ。増収増益の見通しを示す企業は前期より多い27社。前期は増収減益だった10社もそろって増収増益を予測する。
利益体質強化の動きが加速
多くの企業がコスト対策を継続し、利益体質強化を推し進める構え。
セイノーホールディングスは4月1日付で、輸送グループ6社の営業エリアを整理・再編。営業力強化と業務効率向上を図る。カンダホールディングスは不採算営業所の業績改善をさらに進め、増収増益に転換する。
4月、5月と足元の業績は順調に推移している企業が多い。消費増税前の駆け込み需要による反動減も「思ったほどではない」との声も聞かれる。解決策の見えない人手不足や燃料高など不安要素もあるが、利益体質への構造改革が進めば、今期のさらなる好成績が期待できそうだ。
今期も〝ポジティブ〟 バークレイズ証券アナリスト 姫野良太氏
アベノミクス以降、構造的に荷物が増えている。前期は1年にわたり数量と単価が増加。消費増税前の駆け込み需要が加わり、増収増益につながった。
当初、数量は増えてもコストが増え、利益がかえってマイナスになる「豊作貧乏」の事態も心配されたが、物流企業の荷受け制限や適正単価収受の努力が実り、利益に結び付けることができたようだ。
足元の状況から、今期はそうした流れが続くとみられる。小売り、EC(電子商取引)、製造業など業種にかかわらず、物が時間通り届かなければ商売はできない。物流コストのアップは受け入れざるを得ないのではないか。実際、家電量販店のヤマダ電機や、アパレルのユニクロなどである程度、料金改定に応じる動きが出てきている。
消費増税後の反動減の影響を大きく受けることもなく、堅調な荷動きを見積もり増収増益を計画する物流企業が多い。数量増、単価増とポジティブな期待が持てる1年になりそうだ。
(経歴)
姫野 良太氏(ひめの・りょうた) 平成16年慶大経卒。三菱UFJモルガン・スタンレー証券で運輸・商社セクター担当。24年4月からバークレイズ証券。(文責・松井 悠)