物流不動産ニュース

物流、物流不動産、倉庫を網羅した
最新ニュース・情報を発信しています。

  • メール会員情報変更
  • メールマガジンバックナンバー
  • ニュースメール配信登録

運転手不足の一助に▼高まる海上輸送ニーズ 国が利用を後押し 

2014年07月03日

輸送経済新聞社

 海上輸送に追い風が吹いている。ドライバー不足に起因する車不足で、トラック輸送の需要がタイトになっていることが背景にある。国土交通省もドライバー不足解決の一手として、「トラックの無人航走」の周知を図るなど海上輸送へのシフトを促す。一方、トラック事業者の「長距離航路志向」も出始め、一部の中距離航路では対応を求められるケースも出ている。  
 日本長距離フェリー協会の調べによると、4月の中・長距離フェリーによるトラック輸送実績は前年同月比3%増の10万1600台。

駆け込み特需フェリーにも

昨年から前年同月を上回る実績が続いており、特にことし1~3月は7~9%の大幅増。
 「北海道航路では、3月に運び切れなかった分が4、5月まで残った」(商船三井フェリー)。トラック業界が景気回復と消費増税前の駆け込み需要に沸いたのと同様に、フェリーの荷動きも好調に推移した。
 好調の理由は他にも。トラック業界のドライバー不足だ。特に長距離ドライバーが不足したことで、長距離輸送の受け皿として海上輸送があらためて注目された。フェリー・内航RORO船のニーズは今後も高まることが予想される。

船介した車両相互利用、推進

 ドライバー不足対策として、国も期待を寄せる。ただ、トラックからのモーダルシフトは、リードタイムの制約や荷主の理解が進んでいないことから、思うように普及しない現状があった。そこで、海上輸送の利用促進に向け国交省が検討するのが、フェリー・内航RORO船を介したトラック相互利用=「トラック無人航走」の普及だ。
 船にトラックだけを積み、着いた先の港から別事業者のドライバーが運ぶ。「1台のトラックに、途中の中継地点で他社のドライバーが乗ることは認められている」(国交省海事局)ので、それを船を挟んで行おうというわけ。
 海事局は船社を通じてトラック事業者への周知を図る方針。フェリー会社からは、「今後、増えると思う」(川崎近海汽船)、「相手があってのことで簡単ではないだろうが、1つの選択肢として広がってくるのでは」(阪九フェリー)など前向きに捉える意見が。
 海上輸送を使う北海道のトラック事業者も「可能性としては十分ある」(共通運送)。全日本トラック協会は「中小事業者がすぐに取り組むのは難しいが、大手が実績をつくればチャレンジする土壌は生まれる。国がバックアップし、進めてほしい」との見方だ。

長距離航路へシフト見られ

 好調な海上輸送だが、一部に課題も。トラック運転者の長時間労働に対する行政処分の厳格化で、海上輸送に対する事業者の「長距離志向」が出てきていることだ。
 八戸―苫小牧の中距離フェリーを運航する川崎近海汽船では、「トラックドライバーの労務問題で、ルートによって長距離航路にスイッチする利用者が出始めた」という。同社は常陸那珂―苫小牧の長距離RORO船航路も運航しており、「そちらは好調」(同)。中距離と長距離で需要に温度差が生まれている。
 北海道―本州間の長距離フェリーを運航する別の船社からは、「確かに短・中距離航路からシフトしている話はちらほら聞く」の声。「コンプライアンス(法令順守)を重視するトラック事業者の意見を踏まえ、対策を模索している。きめ細かな対応が必要になってくるだろう」(川崎近海)。
 一部の短・中距離航路への逆風はあるが、全般的に海上輸送には追い風が吹いていることは間違いない。新造船投入で積載能力アップを図る船社も多く、需要増への対応は可能。海上輸送利用をためらう荷主は多いが、「地方運輸局が独自で行うフェリー活用の相談会の拡充」(国交省海事局)など、国も荷主の理解を求める方策を検討している。(藤本 裕子)