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トンボの目▼日通・貸切運賃値上げ 大幅コスト増が背景に 

2014年09月17日

輸送経済新聞社

 日本通運(本社・東京、渡辺健二社長)が9月から、貸し切りトラック届け出運賃の20%値上げに踏み切った。背景にはコントロールの難しい人件費 や燃料費、車両費などの大幅なコスト増加がある。交渉を通じ、いかに顧客に理解を浸透させ、運賃改善につなげるか。動向に業界が注目している。
 営業用トラックの運賃制度は平成2年、物流2法施行により認可制から事前届け出制に移行。15年からは事後届け出制となり、自由化された。
 日通は届け出制移行前の2年に運輸省(現・国土交通省)が認可した貸し切り運賃をことし8月末まで据え置いてきた。今回の値上げ率は、11年に運輸省が通達した基準運賃(2年当時)の上限20%に合わせた。

トラック原価20年で35%増

 国交省がまとめた「自動車運送経営指標」によると、トラック運送事業者平均のキロ当たり輸送原価は平成3年に比べ23年は580円93銭と35%増加。
 日通によると、人件費では、法定福利費の事業者負担保険料が2年比で39%増。軽油価格も2年度の1リットル当たり平均77.17円に比べ、25年度は131.65円と71%アップした。
 車両の環境規制も厳しくなり、従来車両へのPM(粒子状物質)減少装置など環境対策費に加え、環境対策車用の尿素水といった消耗品のコストが増加。車両 価格も環境性能強化・低燃費化に伴いメーカーの希望小売価格が大型10トン車の場合、20年余りで65%上昇。コストに見合わない運賃実態になっていた。
 日通は改定前から、個別で顧客への運賃改善交渉を実施。コスト増加に対する顧客の理解度も昨年ぐらいから増し始めた。今回の値上げは「軽油価格を織り込んだ〝本来〟の運賃に近付けるための改定」(上條靖業務部専任部長)として、顧客への理解浸透に拍車を掛けそうだ。
 特積み運賃は23年4月から、11年の運輸省通達の運賃上限20%を適用しており、今回改定した貸し切り運賃と同水準。今後、特積みについても「現行運賃の妥当性を検証しながら、経済情勢に合わせて見直していくことになる」と上條専任部長。

特積み運賃も妥当性検証へ

 おととしから路線や宅配大手による運賃適正化が加速。深刻な人手不足や燃料価格高騰が続く中、業界全体の運賃改善は喫緊の課題。
 「日通さんのような大手が値上げに踏み切ったことは大きい」(ある北陸の物流トップ)など早くも歓迎の声。運賃改定を強みにした日通の顧客交渉が実るか どうか。その成果が、貸し切り輸送を主力とする3PL(サードパーティー・ロジスティクス)業界での運賃改善の機運向上につながる鍵にもなりそうだ。(水 谷 周平)