物流不動産営業の基礎情報:商材、荷主、物流用途 − 第5回 再び学ぶ物流不動産
倉庫の用途は大きく様変わりしました。最近は巨大空間や内部レイアウトの自由度の高さからスタジオや創発的なオフィス、展示場、各種の実験施設としても注目を浴びる様になっています。
生産工場の貨物や小売流通業の商品では、倉庫をただの雨よけ程度としか考えられなかったころに比べれば、倉庫の営業活動はプロデュース冥利に尽きるマーケットの急成長です。入れ物、器、仮設的建築物という感覚で考えていると商談のチャンスを失います。
『お客様は倉庫を探しているのではなく、倉庫で解決できる問題やお悩みを抱えているのです。』このように考えてアプローチを掛けるのが、ソリューション営業と呼ぶ高い付加価値を生み出せる営業スタイルです。
ハンドドリルの100年メーカー、B&D(ブラック&デッカー)社の社訓は、「小売店であれ、消費者であれ、お客さまは当社の製品を欲しがってい るのではなく、6ミリの穴が必要なのだ」という逸話を通して、『営業とは顧客の問題解決に焦点を当てよ』という原則を徹底しています。
我々も物流不動産という倉庫や施設の品揃えを常に最新、豊富にしてはいますが、倉庫選択のお手伝いではなく「物流問題の解決策として、倉庫を選ぶ。場合によっては物流事業者との引き合わせをする。」という選択肢を考えておくべきでしょう。
物流不動産は単なる不動産としての倉庫や施設ではなく、物流事業者にとって見ればサービス提供の一部分でもあり、すべてでもあるのです。
最初の営業スタンスとしては、お客様が自営で物流を営んでいようと、物流事業者とのサービス契約を結んでいようとまず尋ねるべき質問は、
『どのような立地、条件の物流施設をお求めですか?』ではなく、もっと根源的な診断や発想の創発を呼び起こすような発話が必要です。
『なぜ物流施設をお探しなのですか?』そして、事業の概況について相手によって、手間や面倒を掛けて負担にならぬような範囲でお伺いを始めるのが方 法でしょう。物流不動産で解決できているかどうか、お客様の問題探索を始めることが営業活動そのものなのです。次回は、新規顧客の開拓について考えます。
イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント・花房陵