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人づくりは社会づくり その5「非は理に勝たずとはいいながら」 - 135 

現在、鎌倉では市職員労働組合(以下、労組)の事務所が不法占拠により退去するのしないのと問題になっている。まして労組の不法占拠している場所は児童施設の建設予定地であり「自分たちのワガママで、子供たちの権利を阻害している」という指弾も、世論の激化を助長している。言うまでもなく、不法行為は正されるべきであり、労組が現地に居座り続ける事には一分の理もない。しかし、一方の非が必ずしもまた一方の理を保証するものではなく、退去せよ(させよ)と強硬に主張する側にも、不純な動機を感じてしまうのは筆者だけだろうか。

血税に録を食む公務員は、何につけて憎悪の的にされやすく、まして不景気や社会不安など、民衆のストレスが溜まるほど、その傾向は激化する。そんな心理も働いて、公務員叩きは政治家にとって絶好のパフォーマンス(人気取り、実績作り)となる。その指弾が激しく、目立つほど民衆の溜飲を下げ、「市民の味方」「改革者」として高い評価をものにする。しかし、それが必ずしも公益に資するものとは限らないことは、歴史を省みるに明らかである。

本件については、労組が現事務所を退去すれば済む話であり、それが円満に行われるに越したことはないのである。聞けば、労組は代替スペースの提供があれば退去に応じるとしているから、それならば現状と概ね同程度のスペースを合法的に提供すればよいのではないか。わざわざ相手の退路を塞いで(譲歩限度を超えた条件を突きつけて)挑発する手口は、まるでアメリカの外交を見るようである。

こうなると、公益を守るためには波乱が起きることもやむなし、というよりも、パフォーマンス(人気取り、実績作り)ありきで波乱を起こすべく、公益をダシにしているようにしか思われない。童話「北風と太陽」ではないが、往々にして手段の格好良さに目を奪われ、目的達成から遠ざかる愚を犯しがちである。

本件から得る教訓は、ビジネス現場に資するものとして筆を執る次第である。

(フリーライター 角田晶生)2016.01.20