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人づくりは社会づくり その7「『心を込めました』を言い訳にしない」 - 140 

 角田20160320

東日本大震災(平成23年3月11日発生)から5年が経ち、日本人の記憶も風化しつつあるように思われるが、あの震災が私たちに数多くの教訓を残した事実は変わらない。そこで今回は、その一つを振り返りたい。

当時、福島原発事故に伴う電力不足から各地で計画停電が実施されたが、電車の運行についても、大きな影響が及んだ。駅に行くと「一本でも多く運行するが、電力供給が覚束ない場合、運休もあり得る」と言った説明がされていた。少しでも利用客のニーズに応えようとするサービス精神による措置と思われるが、その評価は賛否の分かれるところである。

利用者は、来るか来ないか判らない1時間に10本の電車より、確実に来てくれる1時間に2本の電車を求めるものである。状況を把握していれば、サービス低下の事情は理解できるし、それを前提として計画・行動できるだけの適応力を、日本人は持っている。

一番迷惑なのが、来ると言いながら結局来ないパターンで、いくら最善を尽くしたところで、利用者が求めているのは努力の過程でも失敗の弁明でもなく、結果なのである。そもそも「出来る限りの努力はします」という前置きは失敗の予防線以外の何物でもなく、それを聞いた人間の心に多少の寛容さをもたらすことが期待されるものの、所詮はそれだけの話である。

心を込めて、全力で、精一杯、出来る限り……こうした精神性あふれるフレーズは、広く日本人に好まれるところであるが、それはあくまでも結果(サービス)の確実な提供が前提、言い換えれば、精神はオプションに過ぎないのである。嘘だと思うなら、試しに顧客からの依頼に「心だけ」で応えてみるといい。いくら込めたところで、クレームは必至であろう。

当たり前の話であるが、顧客が求めているのはサービスであり、感動のドラマではない。あまりに淡々とした態度も考え物だが、「全力でサービスを提供している」自分に酔わない視点を保ちたいものである。

(フリーライター 角田晶生)2016.03.20