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人づくりは社会づくり その9「善意とニーズのミスマッチ」 - 147 

「第二の津波」という言葉がある。これは東日本大震災の救難活動に当たった海上自衛隊指揮官によって語られたもの(『新潮45』5月号)であるが、被災地に寄せられた支援物資の多さを津波に喩えている。こう言うと、中には「せっかくの善意を津波(=有害なものに喩える)とは何事か」と反発される方がいるかも知れない。しかし、語弊を恐れず直言するなら、いかなる善意も状況に対する配慮がなければ、無益どころか有害となることは多いものである。具体例を挙げれば、冷蔵設備が不十分な中で生鮮食品を送られても腐らせてしまい、却って処分に人手と費用と時間がかかる(それらのコストが復興に費やされるべきことは論を挨たない)。他にも、破れた古着や壊れた家電品、千羽鶴や応援メッセージの寄せ書きなどが積み重なり、文字通りの「津波」となって被災地の(ただでさえ混乱・麻痺している)物流網を直撃。かくして全国から寄せられた善意が、その願いに反して被災地の復興を妨げてしまっている事は、皮肉という他にない。これでも、なお「善意である以上、感謝こそすれ批判などすべからず」と主張する向きはいない……と思われるであろう。

が、気がつくと似たような行動は多いものである。ビジネスに置き換えるなら「顧客のニーズを無視した(又は把握していない)サービス」がこれに当たる。これをすれば喜ぶだろう。いや、むしろ、ここまでしているのだから喜ぶべきだ、喜ばねばおかしい……とばかり、頼みもしないオプションを追加してしまうのは、直接言葉を交わさずに相手の胸中を拝察する日本人らしい美徳と言えなくもないが、いかんせん有事である。平時なら、内心はともあれお礼状の一通も書いて寄越すのがマナーであろうが、それでも要らないものは要らないのであり、それが相手の心証に及ぼす影響は、ご賢察の通りである。「相手のニーズを確かめ、それを提供する」当たり前のように思われて、意外に実践されていない教訓が、読者諸賢の参考となれば幸いである。

(フリーライター 角田晶生)2016.05.20