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膨らむ「不動産新規開発規制強化」への期待 - 161 

賃貸業を含む不動産業従事者が戦々恐々としている二つの問題がある。ひとつは「2018年問題」、もうひとつが「2019年問題」だ。

ひとつめの「2018年問題」。昨今、東京都心部を中心としたエリアでは盛んに再開発が行われている。森ビルによると、今後2020年までに東京23区内で供給される大規模ビルの貸床は571万㎡。2016年~2020年までの年間平均供給量は114万㎡で、1986年~2015年の平均103万㎡を上回る見込みだ。特に供給量が大きくなるのが2018年以降で、2018年139万㎡、2019年124万㎡、2020年137万㎡となっている。昨今、確かに景気は悪くない。空室率も改善傾向にあるし、これだけならさほど大量の供給とは思わないかもしれない。しかし2018年の供給を都心3区(千代田区・中央区・港区)に限ると105万㎡で、都心3区における100万㎡以上の供給は2006年以来じつに12年ぶりのことなのである。こうした動きを受けて、2018年には賃貸オフィスの需給がついに逆転するといわれているのである。

もうひとつの「2019年問題」も深刻だ。国内人口は2010年を境に減少に転じたが、実は世帯数はかろうじて増加を続けている。未婚率や離婚率の増加、晩婚化などが主な理由とされているが、その“効果”が期待できるのも2019年まで。国立社会保障・人口問題研究所によると、2019年以降は世帯数も減少すると予測されているのだ。

実は日本の人口減少・世帯数減少が予測されたのは最近ではない。1974年の人口白書に「日本の人口は2010年にピークアウトする」旨の記載があるのは有名な話だ。人口減少問題に国が取り組みはじめたのは、やっと1990年に入ってから。いまさら無策を嘆いても仕方がないが、その間の対策の遅れを取り戻そうという動きが不動産業界でもではじめている。

といっても出生率を上げることではない。それも大切だが、不動産業界ができるのはせいぜい需給バランスを適正に保つことくらい。もちろんそれとて簡単ではないのだが、大手デベロッパーのなかからは市場原理のみに任せた無秩序な開発を危惧する声が上がりはじめているという。あるデベロッパーの開発担当者の私見では、早ければ2020年の東京オリンピック閉会後、遅くても2025年ごろまでに新規開発を規制する方向に持っていかなければ不動産が暴落しかねないという。某ゼネコンの開発担当者から同様の話を聞いたこともある。もちろん具体的な動きがでているわけではない。出所のはっきりしない、具体性を欠く話で恐縮だが、そういった声が現場から上がっているのは確かだ。行政は現在、大規模開発に対しては容積率その他の規制を緩和する方針をとっている。これを是正するためにはやはり行政が動かなければ、という。

すくなくとも現在、「2018年以降に都心部で賃貸ビルが大量供給される」「2019年に世帯数が減少に転じる」ということははっきりしている。この点に関していえば、何に備えるべきかはすでにはっきりと答えがでているのである。ただ座して待つ愚だけは何としても避けたい。

(久保純一)2016.10.20