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サンタクロースのロジスティクス - 166 

世界で一番はたらきものの夜間配達人は誰かと問われたら答えはひとつ、サンタクロース氏である。一般的な宅配便のドライバーの配送先は、エリアにもよるが一日あたり100件が目安といわれている。担当するエリアの面積は、都市部では数百㎡から数千㎡。これに対しサンタクロース氏は世界中の子供たちに(いいこ限定とはいえ)おもちゃを配るのだ。しかも(魔法を使うとはいえ)一晩で。実際に一人で配るとしたら、どのくらいの時間がかかるのだろう。

まずは配達件数から計算してみよう。総務省統計局のデータによると、15歳未満の世界的な割合はおよそ25%。世界人口がおよそ73億人なので、子供の数は約18億2500万人と推定される。だがすべての家に子供がいるわけではない。主要国の平均世帯人員を約3.5人(途上国はもっと多いようだが残念ながらデータがない)とすると、世界中の世帯数はおよそ20億(かなり乱暴だが)。実際には一人暮らし世帯もあって、日本では3世帯に1世帯が一人暮らしだ。主要国の平均なども加味して、ここでは世界中の4世帯のうち3世帯に子供がいる(これもかなり乱暴だが)ということにしてしまおう。つまり、世界中の約15億世帯が配達先だ。なお子供はすべて「いいこ」であると仮定する。

さて一般的な宅配ドライバーが積み込みや休憩も含め、100件配るのに12時間かかるとする。同じペースで15億世帯に配ると1億8000万時間。日にちにすると750万日。もうわけがわからないが、約2万と547年かかることになる。とてもではないが待ちきれない。

もちろんその都度おもちゃを積みに北極(物流センターはフィンランドにあるという説もある)に帰っていたのでは、このペースでは配達できない。正式なサンタクロース氏のソリはトナカイ9頭で引くが、荷台の大きさなどからしても最大積載量はせいぜい500kgくらいか。おもちゃはかさもあるし、50件くらいごとにおもちゃを積み込まなければならないだろう。とるすと、あらかじめエリアごとに地域センターを設置しておもちゃを集積しておき、配達先別に仕分けをして、いつでも積み込めるようにしておかなければならない。やはり効率的な物流システムがなくては数千年単位で遅延する恐れがあるようだ。

サンタクロースが実際に何人いるか知らないが、クリスマス本番まであと数日に迫った今日、各エリアを担当するサンタクロースたちは大忙しで準備をすすめていることだろう。世界中の子供たちに一晩でおもちゃを届けるなんて、これを魔法と言わずしてなにを魔法と言おう。

 

(久保純一)2016.12.20