「誰がやっても同じ」というチャンス - 105 
味の素、カゴメ、ミツカン、日清オイリオグループ、日清フーズ、ハウス食品グループの食品大手6社が、独自の物流インフラを整備すると発表して話題となった。物流業界の人材不足やコスト高への対応策として実施されるもので、6社は今後共同で配送を行うだけでなく、他社への参加も呼び掛けているという。物流業界に身をおく方々は、このニュースを聞いて二通りの反応を示したのではないだろうか。
ひとつめが、危機感を抱いた方。生産者側からしてみれば、物流は「商流」や「流通」の単なる一部分だ。メーカーにしてみれば、品物をA地点からB地点まで運ぶだけなら誰がやっても同じ。なら自分でやってしまおうという判断は、ごく真っ当なものだ。しかしメーカーによる物流の内製化は、その協力会社として仕事を請け負っていた物流業者にとって自身の仕事が減ることと同義になりかねない。こう考えれば、事業を縮小するか、新たな収益源を探すか。物流業者のとるべき選択肢は限られてくるし、目の前も暗くなってくる。
さてもうひとつめは、チャンスを感じた方。「誰がやっても同じ」なら、低コストかつノウハウを持った業者にまかせたいという思いもまた真っ当なものだ。物流の内製化といっても、何のノウハウもなしにできるものではない。経験の蓄積が効率化に直結するのは物流業の特徴であり、強みでもある。実務はトラックがあればできるものではない。待ちの営業、減点主義といわれる物流業にとって、物流の切り替え時期は新たなチャンスなのではないだろうか。
物流に従事する人材は、現業を中心に今後も減り続ける。それにつれて、物流の内製化は増加するだろう。ピンチをチャンスにという言葉が、少しずつ重みを増しつつある。
(久保純一) 2015.02.20