倉庫の明日はどっちだ - 109 
東京・港区の建築会館で開催されていた「MAKE ALTERNATIVE TOWN(メイクオルタナティブタウン)展」が22日に終了した。芝浦に点在する倉庫を素材に、5人の若手建築家がエリア活性化につながるリノベーションを提案する展示会で、初日の16日にはプレゼンテーションも行われた。プレゼンテーション、展示ともに多くの人が来場し倉庫リノベーションに対する注目度の高さを再確認することができたが、なによりも、これからの「倉庫のあり方」に対する結構重要なエポックだったのではないだろうか。
5人の提案は単に倉庫の新しい使い方だけではなく、いずれも倉庫という概念そのものを見直そうという意欲的な内容だ。
例えば庫内をネットで上下に仕切り、下の空間はそのまま倉庫とし、上の空間はドローンのサーキットコースとして開放する。 例えば高速道路の高架と同じ高さのフロアをショーウィンドーにし、見せるオフィスにする。 例えば多層倉庫のエレベーターに入る大きさのユニットを作成し、その組み合わせによって店舗やワークショップの場などとして使う。 例えば倉庫内を近隣住民のアーカイブとし、図書館的な知の集積機能をもたせる。 例えば屋上のゾーニングを再構成し、イベントや飲食などあらゆる使い方を可能な空間とする。
奇抜と感じる人も少なくないだろう。しかしリノベーションを行ううえで最も大切なのはそこから得られるバリューであって、何の機能を付加するかではない。一見奇抜に思えるアイディアも、倉庫の活用と周辺エリアの活性化という目的を考えればごく真っ当なアプローチであることがわかる。
そうした視点であらためて見れば、こうしたアイディアが倉庫業界・物流業界ではなく、業界外からでてきたことに危機感をもつべきではないだろうか。なぜ地元からこのような斬新なアイディアが寄せられなかったのか。地元に対する、あるいは自身の倉庫に対する意識をあらためてもいいのではないだろうか。芝浦だけではない。倉庫に対する新しいアプローチに応えるだけの気概が、物流業者や倉庫のオーナーに残っているだろうか。その姿勢が問われている気がしてならない。