かつて、物流は金融であった - 130 
バブルを経験した人にとって、金融や証券という言葉はいまだにマイナスイメージがあるようだ。倉庫業や物流業でも、何か敬遠したい言葉というイメージを持つ人が少なくないのではないだろうか。
しかし歴史をひも解いてみると、物流や倉庫が実は金融や証券と深く結びついていることがわかる。例えば日本海と京都を結ぶサバ街道。日本海で獲れた海産物は、京都に運べばより高値で売ることができる。物流は産地から消費地へと、生産品をより高価で販売できるエリアに運ぶことで発展してきたのだ。倉庫も同様で、江戸時代の商人は豊作で価格が下がった年に米を購入して貯めておき、不作で価格が上がった年に売ることで利益を得ていた。安い時、安い場所で買って、高く売れる時、高く売れる場所で売る。これは投資の基本であり、蔵屋敷に収められた米は一種の金融商品であったのである。
この仕組みがより高度化していわゆる先物取引が出現するのだが、これなども物流や倉庫と深くかかわっている。江戸時代に始まった米の先物取引は、書面上で購入した収穫予定の米を、いつ、どこで売却するかで利益が大きく変わってくる。より多くの利益を得るためには米の物的流通の理解が必要で、しかも各地の米の出来具合の予想や相場も知っておかなければならない。輸送と保管、それに情報という物流の基本は、当時からすでに存在したのである。江戸時代中期、米の一大集積地であった大阪で世界初の先物取引市場が開設されたのも、この一連の流れがわかれば当然という気がする。
日本の倉庫業・物流業は、金融業・証券業と密接に結び付いてきただけではなく、それによって発展してきた面があるといって過言ではない。マイナスイメージを持つのではなく、むしろ最先端のビジネスの一端を担ってきたという誇りがあってもいいのではないだろうか。
(久保純一)2015.12.20