物流の時間、不動産の時間 - 134 
業種が異なれば時間軸も異なる。物流業務では主要なルーチンワークから次のルーチンワークまでのスパンをひとつの区切りとしてスケジュールが組まれることが多いが、現場ではそのスパンがそのまま時間軸として捉えられている。具体的には週ごと、日ごと、時間ごと、場合によっては数十分ごとをひとつの単位として捉え、これに沿ったオペレーションを行う。これがいわば現場における時間軸だが、これを経営という観点から見ると、また違った時間軸が浮かび上がってくる。
経営的観点における時間軸として最も基本的なものは、業務を行ってから入金されるまでの期間だ。クライアントに対して仕事をし、請求し、入金されるまでという一区切りだが、この時間軸はそのまま資金繰り計画の基準となる。期間は短くて1か月、長くて数年だろうか。だが資金繰りばかりに目が行っているようでは成長はない。成長のためには数か年にわたる時間軸が必要となってくる。
成長のための時間軸とは、端的にいえば目標を設定してから達成するまでの期間だ。より具体的にいえば、投資してから回収するまでの期間と言い換えてもいい。しかし実際の物流現場業務においては、設備や人材の拡充による効率化が収益力強化に直結するとは言い切れない面があり、投資における費用対効果が見えづらい。物流は他の業種に比べ、目標の設定がしにくいのである。
一方、同じ物流でも倉庫や物流施設という不動産を所有しているとこの時間軸はまた異なってくる。基本的に不動産における時間軸は、毎月の賃料というルーチン的なスパン、建物の保守・修繕・機能維持という中期的なスパン、そして建物の建築費とその回収・建て替えという長期的なスパンの3本に集約されている。実際には考慮しなければならないファクターは他にもあるが、この3本の時間軸が基本であることに変わりはない。収入は月ごとの賃料、支出は修繕計画、建築費の回収という当面の目標に対しては利回りを計算すれば進捗がわかる。実にシンプルかつ効率的な収益モデルなのである。
この時間軸はもちろん他の業種にも応用可能だ。倉庫や物流施設のオーナーはもちろんだが、物流においても不動産のシンプルな時間軸を応用することで目標が明確になり、やるべきことが見えてきたりするのだ。例えば倉庫を借りている場合は、次の賃貸契約の更新までをひとつのスパンととらえて利回りを考察してみる。これまでとは違った収益構造が浮かんでくるはずである。
(久保純一)2016.01.05