物流不動産ニュース

物流、物流不動産、倉庫を網羅した
最新ニュース・情報を発信しています。

  • メール会員情報変更
  • メールマガジンバックナンバー
  • ニュースメール配信登録

ビンテージ倉庫が売れる日 - 138 

ここ数年、中古車の価格が上昇している。とはいえ全ての車ではなく、値上がりしているのはごく一部。特に上げ幅が大きいのは20世紀中に生産された高級車やスポーツカーで、これは中古車というよりビンテージカーやクラッシクカーと呼んだほうがいいだろう。値上がりのきっかけは世界情勢の不安定化によって安定的な現物投資商品へのニーズが高まったためといわれているが、実は今ひとつはっきりしていない。しかし今現在も上昇し続けているのは、投資家が有益な投資対象として認めたからに他ならない。

こうした車はもともと生産台数が少ない上にステイタスがあり、世界中のマニアが欲しがるというニーズもある。しかもいずれも生産が終了しているため、同じ車が増えることもない。彼らにとっては、希少性が保たれニーズも安定した、安全かつ利回りの良い現物投資なのである。

中古車業界ではもうひとつ注目されている動きがある。こちらの主役は1990年代に生産された日本製スポーツカーで、やはり価格が上昇している。その理由はアメリカの「25年ルール」。これはアメリカで新車として販売されなかった車は生産から25年以上経過しなければ輸入してはいけない(高額な関税がかかる)というもの。1990年代の日本車といえば高性能スポーツカーの全盛期だが、アメリカでは近年ようやく当時の日本車に普通に乗れるようになったのである。こちらは今のところ投資ではなく自分で乗って楽しむことが目的のようだが、それでも車種によっては日本の数倍もの価格で取引されているという。

どちらもこれほど流通量が増えるとは、誰が予測できただろうか。しかしいずれもマーケットが無かった、あるいはひじょうに小さかっただけで、もともとニーズは存在していたのだ。ビンテージカーは投資家がその価値に気付かず、90年代の日本車は関税によって流通が阻害されていたにすぎない。肝心なことは、買ってくれる人にいかに訴求するかであって、ニーズさえあればマーケットは自然と形成されていくのである。

ビンテージカーや90年代の日本車という例は少し特殊かもしれない。しかし空いている倉庫だってアプローチの仕方や訴求対象を変えてみれば、予想もしないところからオファーがあるかもしれないのだ。そのために必要なのは、既存の枠組みを超えた情報収集力と発信力の強化だろう。どんなところから引き合いが来るかわからないのだ。普通の倉庫だって、欲しい人には魅力的に見えるもの。海外の投資家が倍の値段で買いたいなどということは、さすがにないかもしれないけれども。

(久保純一)2016.02.20