業界横断コラム「冷媒フロンガスのカウントダウン」 
日本冷蔵倉庫協会は6月1日、定時総会を開き、任期満了に伴う役員改選でニチレイの大谷邦夫氏が満場一致で新会長に選任した。
大谷会長は懇親会席上のスピーチで冷媒フロン問題に触れ、「国交省、環境省、自民党の物流倉庫振興推進議員連盟からご支援をいただきながら、補助金拡充に取り組んでいきたい」と述べ、電気料金が経営を圧迫していることやフロン対策、老朽化施設の建替えへの支援を求めた。
冷蔵倉庫とは倉庫業法施行規則別表で定める第8類物品(生鮮品、凍結品等の加工品、その他+10度以下での保管が適当なもの)を保管する倉庫。水産品の水揚げが行われる漁港を中心に拡大。流通の近代化に伴い、水産品に加えて畜産品や農産品が冷蔵倉庫に保管され、1960年代に普及した冷凍食品が新たな需要を取り込み、現在の市場規模は約3000億円。
業界の大きな壁として立ちふさがるのが「脱フロン」問題だ。モントリオール議定書(Montreal Protocol on Substances that Deplete the Ozone Layer)ではオゾン層破壊危険性の高い特定フロン<HCFC>(ハイドロクロロフルオロカーボン)について、先進国は2020年までに全廃。代替フロンと呼ばれる<HFC>(ハイドロフルオロカーボン)も温室効果が高いことから、段階的に削減・廃止していくとしている。
日本国内では2015年4月にフロン排出抑制法が施行、業務用機器の適正な管理が求められた。冷凍・冷蔵倉庫や冷凍・冷蔵車などで二酸化炭素(CO2)を1000トン以上漏えいさせた場合、企業は漏えい量を国への報告が義務付けられている。日本で実質的にHCFCが使用不可能となるのは東京五輪が開かれる2020年、待ったなしの状態だ。今後は「アンモニア」への転換が主流となると見られている。
大規模な保管能力を有する倉庫の設備投資額は億単位にものぼる。そのため設立40年以上経過したヴィンテージ冷蔵倉庫の多くはリプレイスされる可能性が高い。これに対しても国交省では予算取りをしていく計画だ。
日本政策投資銀行のまとめによると、2030年には0.5%の補充用も含めたHCFC全廃の影響を考慮した需給ギャップは2009年に+14%だったが、2020年にはマイナス9%と需要ギャップが逆転。冷蔵倉庫の不足が想定される。
今年は物流総合大綱が策定される年だ。日本のお家芸といえるコールドチェーン市場は拡大傾向、現在の食生活に欠かせない。コンビニエンスストアや食品スーパーなどでは冷蔵・冷凍食品は安定した推移を見せており、冷蔵倉庫への政府のテコ入れが期待されている。
ロジスティクス・トレンド(株) 水上 健