物流不動産ニュース

物流、物流不動産、倉庫を網羅した
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空きスペースの鍵貸します 

シェアリングエコノミーの波は、物流にもじわりと押し寄せている。

例えば先日ローンチされた「monooq(モノオク)」は、使っていない部屋や押入れ、倉庫などの空きスペースを物置として貸し出すというサービス。空きスペースを保有している人とモノを預けたい人とをつなぐという、いわば場所のシェアをすすめるビジネスだ。賃料は1ヶ月あたり1畳5000~6000円を想定しているといい、個人であればちょっとした副収入になりそうだ。個人が金銭を受け取ってモノを預かるのはコンプライアンス上どうかという議論もありそうだが、厳密には場所を貸すだけ。保管した荷物を紛失、破損した際などには保険が適用され、10万円までは保証されるなど、安心感を与える取り組みもなされている。

空いた場所のシェアの次に紹介するのは空いた時間のシェア。バイク便などの配送サービスを展開する企業が開発した「DIAq(ダイヤク)」は、荷物を届けてほしい人と、荷物を届ける手段がありながら時間が空いている人とのマッチングサービスだ。特徴は、運送業者以外にも配送を依頼できる点。自転車や125cc以下のバイクは運送事業者としての届出が不要なため、これらの移動手段を持つ人でも配送が可能という。料金は自転車や原付であれば1080円からとリーズナブルだが、配送者からしてみればわりのいいアルバイトになるかもしれない。

最後に紹介する「souco(ソウコ)」は、その名の通り倉庫のマッチングサービス。こちらは空き倉庫や物流施設内の空きスペースなどを持つ企業と、スペースを必要とする企業とをつなぐ仕組みを構築しつつある。プレオープンしたサイトでは東京、千葉、神奈川、埼玉の空きスペースの登録が始まっており、まずは最少50坪、1ヶ月単位での賃貸借をはじめるという。こちらはBtoBだが、規模の拡大には業界全体の意識変革が必要な気もしてしまう。あるいは空き倉庫問題の解決策のひとつになるかもしれないのだが。

いずれも物流の未来を変える可能性を秘めているといっていいが、気になるのはどれも既存の物流業界の外からのアプローチであるということ。いわゆる物流業として培ってきたはずのノウハウは、残念ながら少しも活かされていないのだ。実はsoucoはプロロジスが支援しているのだが、これもどちらかというとマッチングのためのプラットフォーム構築を主眼に置いたもの。倉庫賃貸の運営ノウハウを持っているのと、プラットフォームを業界全体に浸透させられるか否かは別問題だ。

昨今のシェアリングエコノミーの興隆には、あらゆる業界が既得権益の損失を危惧している。例えばタクシー業界はカーシェアやライドシェアの勃興に危機感をつのらせ、乗車予約アプリや配車システムの開発をすすめるなど対策に乗り出している。これはライドシェアと敵対するのではなく、タクシー業界への取り込みを視野に入れたなかなかスケールの大きい構想のようだ。

さて、物流業界はどうだろう。シェアリングエコノミーを取り込むか、あるいは利用して活性化につなげるか。

それとも「どうしてあなたみたいな人に恋ができないのかしら」といってあきらめますか?

 

久保純一 2017.09.20