足す、トランクルーム 
成長を続けるトランクルーム市場。市場規模は700億円に迫り、1000億円も視野に入ってきたという声も聞かれる。限界はまだ先のように見え、運営する個々の企業の規模も拡大の途上にある。揺籃(ようらん)期を経て成長期に入った現在は、いわば群雄割拠状態。他者との差別化を企図した様々な先駆的取り組みが、市場に大量投入されるタームでもある。
もともとトランクルームというサービスにおける差別化ポイントは、多くない。屋内型であれば24時間営業やスタッフの常駐、空調完備にセキュリティの充実といった点が重視されてきたが、これらが差別化のキモとされたのはすでに過去の話。もはやすべて当たり前となり、昨今では「荷物を預かる」と別のサービスとを組み合わせて付加価値とするケースが増えているようだ。
例えば都内近郊に展開する「AQUARIUM LAUNDRY」は、その名の通り水族館のようなコインランドリー。熱帯魚が泳ぐ大きな水槽が置かれた店内は確かに特徴的だが、ここで取り上げるべきは店の奥にあるトランクルームの存在。3月末にオープンした船橋三山店には、0.6~11㎡の収納スペースを38室備える。季節ものの衣類や布団を洗濯してそのまま収納できると好評で、他店舗では10組以上の空室待ちがいるという。
東京・虎ノ門に7月竣工予定のオフィスビル「G.GHouse」では、入居テナントにコンシェルジュ付きのトランクルームサービスを付帯する。荷物の運搬や出し入れなどはすべてスタッフが代行。さらに荷物の発送手続きや衣類のクリーニング、不用品の処分や売却なども行う。限られたオフィススペースを可能なかぎり執務にあてたい、めったに使わない荷物にオフィスを割かれたくないという声を汲み取り、トランクルームを付帯したという。
他にもトランクルーム付きの集合住宅はひとつのジャンルになりつつあるし、コワーキングスペースと併設されている例もある。既存のビジネスとトランクルームとの融合が、昨今のトレンドといったところだろうか。国内の屋内型トランクルーム普及率はわずか0.3%(キュラーズ調べ)ほどとはいえ、利用経験者は確実に増えておりその目も肥えてきている。耳目をそば立たせるためには、次はトランクルームに何を足せばいいだろうか。
一般的には成長期から成熟期へとタームが移るにつれて、提供されるサービスの種類は絞られていく。しかし昨今次々とあらわれるトランクルームの新サービスを見る限り、その成長期は当分続きそうだ。
久保純一 2019.4.5